第30話 中国青島市訪問報告その2「スケールの大きさ」

青島報告その2のテーマは「スケールの大きさ」

10月19日(木)から22日(日)にかけて、中国青島市に行き、「日中生活ごみ分別及び減量化対策に関する研究ワークショップ」に参加しました。経済成長に合わせて猛烈な勢いでごみが増えている青島市では、近年ごみ減量が進みつつある京都市の経験や情報を得たいとの要望が強く、京都市及び京エコロジーセンター職員とともに、青島市に招かれる機会を得ました。この訪問で、中国で感じたことを書いていきます。
報告その1「まちの美しさ」に続き、今回は「スケールの大きさ」。環境ビジネスの成長にも触れます。
2017.10青島市空港・飛行機8写真1 青島上空(ANAエアバス320neo)

機上から、車窓から見えた景色

19日(木)の夕方、飛行機が青島国際空港への着陸体制に入り、窓から地上が見えると、超高層ビルが立ち並ぶ中心市街地が見えました。間もなく空港かと思いきや、まだまだ飛行機は飛び続けます。その間、地上には住宅団地と思われる高層ビルがどこまでも続きました。
地上に降り、青島市が差し向けてくれた自動車で市街地中心部に向かいましたが、空港から市街地まで約20km。その間、道路は片側4車線。市街地に入っても幹線道路は4車線でした。これだけ広い道路を自動車が埋める光景は「圧巻」以外に言葉がありません。
道路沿いには30階建ての超高層住宅が延々と続き、さらに建築中の建物が幾つもありました。市街地が近づくと18階になり、市街地内でも6〜7階建ての高層住宅が続きました。長く「百尺制限」といって、繁華街でも高さ33m制限があった京都市で育った者としては、見上げるばかりの「おのぼりさん」状態でした。
2017.10青島市空港・飛行機2写真2 機上から見えた景色2017.10青島市まちなみ1写真3 延々と続く超高層住宅群

「市」の規模が違う。ごみ処理の単位が違う

青島市の人口が900万人ということは前回も書きました。しかし「市」の考え方が日本と違い、青島市の面積は秋田県とほぼ同じ。京都府の2.2倍。奈良県の3倍。どのような例えをしても「青島市は大きい」ということに間違いありません。
青島市の「市区」と呼ばれる地区の人口は490万人。そのうち中心市街地の人口は約200万人ということです。周辺の広大な農村地帯や都市を含めて「青島市」を構成しています。
日本では市民が排出する生活系ごみの処理責任は、市町村が負っています。そのため、すぐ隣の町なのに、ごみの分別や出し方が違うこともあります。900万人よりも人口の多い「都市」は、日本には東京(23区=約950万人)しかありませんが、一般廃棄物(生活系ごみと事業例ごみ)の処理責任は区が負っていて、最も人口の多い世田谷区でも88万人です。
秋田県ほどの面積があり、900万人が住む地域で、1つの自治体が、生活系ごみの処理責任を負っているなど、日本では考えられないことです。ただ、さすがに周辺の農村部の中には行政サービスが行き届いていない地域もあるようです。
2017.10青島市まちなみ43写真4 青島郊外の農村風景

排出されるごみの量も違う

青島市が1年間に処理した生活系ごみの量は、2016年の数値で309万トン。1日当たり8,500トンになります。京都市の一般廃棄物(事業系ごみを含む)の年間処理量は42万トンで、青島市の7分の1。青島市と京都市の人口比は6:1ですので、僅差のようですが、前述のように青島市は、行政によるごみ収集が行き届いていない地域もあります。「市区」の人口から1人当たりごみ量を換算すると、青島市では京都市の倍以上のごみが排出されていると考えられます。
驚くことに、青島市では最近5年間、毎年平均13%ごみが増えたとのことですので、5年で1.8倍に増えたことになります。今後も人口が増加するため、2020年までに1日当たり10,000トンを越えると青島市は予測しています。
京都市は、長年にわたるごみ減量の取組や啓発が実を結びつつあり、近年ごみ処理量が減っています。京都市の取組から学びたいという青島市の思いは、切実なのです。

処理施設もデカイ

青島市のごみ処理施設もデカイ。10月20日(金)「婁山河ごみ集積施設」に行きました(写真5)。青島市は面積が広く、個々のごみ収集車が郊外の焼却施設まで走ると効率が悪いため、この施設で水分を抜き大型トラック(写真6)に積み替えています。処理可能量は1日4,000トン。400〜450台の収集車が運ぶごみを150台に集約しています。
施設の敷地面積は10万m2。甲子園球場3個分。京都の二条城のちょうど半分!わかりにくい例えをしましたが、施設の入り口から建物が全く見えませんでした。
2017.10青島市訪問施設3写真5 施設の模型
2017.10青島市訪問施設8写真6 積み替え後の大型トラック

焼却工場もデカイ。視察した「小澗西生活ごみ焼却場(写真7,8)」の焼却能力は1,500トン/日。日本のJFEの技術で建設されたもので(写真9)、このクラスの焼却工場が3つあり、さらに3工場の建設が計画されています(写真10)。計画通り整備されると、生活系ごみの直接埋立がなくなり、収集したごみの全量焼却が可能になるとのことでした(写真11)。
比較として京都市の施設規模を紹介します。京都市には3つの焼却工場があり、うち最大のもので700トン/日。将来的に2工場でも対応できる量にまで、収集ごみ量を減らすことを目標にしています(2020年に39万トン)。
2017.10青島市訪問施設10写真7 焼却工場外観
2017.10青島市訪問施設14写真8 焼却工場のスケルトン模型
2017.10青島市訪問施設17写真9 日本の技術で建設されたことを記す掲示
2017.10青島市訪問施設15写真10 新焼却工場の予定地
2017.10青島市訪問施設9写真11 生活系ごみの埋立地

環境企業の成長と意気込み

婁山河ごみ集積施設に隣接して、生ごみ堆肥化施設がありました。スウェーデンの技術を採り入れ、市内の企業・政府部門・レストランから出る厨芥ごみを対象に、堆肥化及びメタンガスの精製を行っています。敷地は1万m2あり、「山東十方環保能源有限公司(十方)」という民間企業が、青島市政府とBOT方式と呼ばれる契約を結び、建設及び運営しているものです。この契約で十方は青島市から土地の提供を受けて施設を建設し、25年間の運営を委託されています。十方はこの間の収入(堆肥や天然ガスの売却等)で建設に要した費用を回収し、25年後には施設を青島市に譲渡することになっています。
BOT方式とは、もともと途上国支援の手法として用いられ、ウェブで「BOT方式」と検索すると、「先進国による、途上国への施設建設支援手法」とした紹介記事が出てきます。
この生ごみ堆肥化施設の場合、建設コストは9,700万元(1元は約17円)。うち8,000万元を十方が自己資金から拠出し、残りは銀行融資を受けたとのことです。今のところ、1日の処理可能量200トンに対して150トンしか処理できておらず、赤字が出ているとのことで、青島市がトン当り120元の補助をしています。十方の担当者は「数年後には生ごみの収集体制が整備され黒字化するが、何より環境のためこのような施設が必要なのだ」と話されていました。
※ build, operation & transfer system

環境ビジネスの巨大化

この施設の他、生活系ごみの焼却工場でも中国国内の企業がBOT方式で施設を建設し、運営しています。視察した「小涧西综合处理園区」は、「青島市環境再生能源有限公司」が青島市と25年契約を結び、運営しています。この企業は上海環境集団という企業グループに属し(写真12)、この企業グループは、国内30ヶ所以上の焼却工場を運営しています(写真13)。
これらの視察から、中国の環境ビジネスの急成長を感じました。その中で、日本円にして何十億、何百億という金を自己資金から拠出できる巨大企業が成長していることを知ることができました。しかもまだ成長途上です。青島市だけでも焼却工場は近々倍に拡大されます。現場の技術者らの真摯な姿勢を見るにつけて、現在は日本や欧米企業の技術に頼るところがあっても、近い将来肩を並べる技術を身につけるようになると感じました。
2017.10青島市訪問施設12写真12 上海環境集団についての説明
2017.10青島市訪問施設13写真13 写真12のアップ

中国にとっての大きな課題

巨大ハード設備の整備は、環境ビジネスに関係する企業にとって、大きなビジネスチャンスと感じていることでしょう。しかし施設を整備し、ごみの収集や処理をする行政にとって、大問題であることは中国でも同じです。
次回以降のテーマにしますが、「中間層の成長」によって、生活の質の向上も求められるようになり、中国の地方政府にとって、生活環境の改善も大きな課題になっています。増え続けるごみ量に対処するため、施設整備を進めていますが、ごみ処理の圧力軽減や資源再利用の推進の重要性も深く認識されています。そのため、住民への意識づけや啓発が大きな課題になっています。しかもそれが2016年以降、中央政府の重点課題に位置づけられたのですから尚更です。(つづく)
2017.10青島市訪問施設25写真14 焼却工場の見学コース内の環境に配慮した生活を呼びかける掲示(以下同じ)
2017.10青島市訪問施設24 2017.10青島市訪問施設23

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