第2話「気付き」のない環境教育の限界

3Rの意味も優先順位も知っているのに、答えは真逆?

第1話で、3Rという言葉の意味や優先順位について理解している人が増えているのに、ごみ問題への関心や実践行動が後退していることを示すアンケート結果を紹介しました。しかもそのアンケートを実施し、発表しているのが環境省と内閣府なだけに重みがあります。
また、私の体験として、小学4年生数百人に「ひたすらリサイクルに励む理佐いくる君」「リデュースに取り組む甘利のまんちゃん」などを紹介し、「どの子を見習いたいか?」と尋ねたところ、ほとんどの子から「理佐いくる君支持」の声が返ってきたことも紹介しました。この質問の前に、その子たちに3Rの意味や優先順位を問いましたが、彼らは正確に答えていました。(詳細は前話参照)
前者のアンケートは大人が対象なので、後者と同じ理由をあてはめることはできませんが、後者の子どもたちがなぜ上記のような答えをしたか、理由として思い当たることを紹介します。

気付き、感じることの大切さ

下図は、ネイチャーゲームの創始者ジェゼフ.B.コーネルの言葉を記したものです。「環境教育では、『わからせる』『教える』のではなく、内面からの『気付き』を引き出すことが肝要」ということを言っています※1。同じようなことは、「沈黙の春」などを著し、環境活動や環境教育の実践者らに大きな影響を与えたレイチェル・カーソン(1907〜1964)も、「センス・オプ・ワンダー」の中で「知ることは、感じることの半分も重要ではない」という有名な言葉で表現しています。
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気付きや感銘は、どこから生まれる?

気付きや感銘は、どこで,どのようなときに生まれるかといえば、自然の素晴らしさに触れたとき、または自然破壊の現場で受けた衝撃などがあげられます。もちろん「現場」でなくても、映像や体験談から「気付き」を得ることもあるでしょう。「この素晴らしい自然を守りたい」「こんなひどい環境破壊をやめさせたい」など、関心や方向は様々ですが、これらのエネルギーが、その後の「学び・理解」への原動力になります。

in about forの環境教育・環境学習

「気付き」「理解」「行動」を、「どこで」「何について」「何のために」という切り口から捉えた表現が、「in about forの環境学習」です※2。forは、「環境のために(考え、行動する)」を指しますが、知識が増せば、行動に結びつくかというと、それだけではなく、知識を行動に結びつけるには「知恵」が必要です。知恵があることで、自分を取り巻く状況において、何が必要とされ、自分が何をするべきかわかります。「知恵」を生み出す力も、「気付き」から生まれた「何とかしたい」と感じたエネルギーです。

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文字情報で得られるものの限界

文字情報から得る知識も大切ですが,第1話や今回の冒頭で紹介した3Rへの小学生の理解は、「おしえる」「わからせる」の結果ではないでしょうか。「気付き」「感じる」ことを抜きに、教科書や環境副読本に書いてあることを覚えるだけでは、その情報をどのように活かすかわからず、いつしか記憶からも消えることでしょう。もちろん、省エネやごみ分別などの行動を「当たり前のこと」として、受け入れさせることはできます。しかし、それは単に手足の動き(ルーチンワーク)であり、「決められたことだから」しているだけです。
「気付き、感じることのない環境教育」でも、環境に関する情報を広め,知識を普及することはできます。しかしそれでは,人々の意識を高めることはできず、一旦受け入れた行動も忘れられ、後退していくことでしょう。大人を対象とした環境省や内閣府のアンケート結果とも合致します。

※1 「ネイチャーゲームでひろがる環境教育」降旗信一,中央法規出版,2001年9月より
※2 「環境教育の概念と定義~1970 年代以降の主要会議・論文のレビューを通した 国際的動向、環境教育概念の歴史的変遷~」 佐藤真久、IGES ワーキングペーパー、1998をもとに筆者の解釈を加えている。「in about forの環境学習」の原典はA M. Lucas (1972)

第2話「気付き」のない環境教育の限界」への3件のフィードバック

  1. 先日はNPOはりま里山研究所での講義ありがとうございました。
    子供たちの3R の優先順位は理解していても実際にはリサイクル工作を選んでしまったということもわかるような気がします。でもものごとの本質をきちんと理解する力を養っていくことがより重要であること、また、何事にも通じる大切な教育だと思います。
    私も地球温暖化防止活動推進員という立場でボランティアに携わる者として漠然としていることが多いです。センスがないでは片づけられなく、本質をつかまねばならないと思います。堀先生のお話は面白く読みやすいです。視点をかえるとか、ひと手間かけるとか、大変考えさせられます。また新しい情報をよろしくお願いいたします。

  2. 堀先生 こんばんは。
    返信ありがとうございます。
    香寺町での講義参考になるところが多く、何回も読み返しています。
    今後ともよろしくお願いいたします

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