分けた後の「その先」で何が起きていたか
◇5月9日放送のNHK「クローズアップ現代+」で、ペットボトルリサイクルが大きな壁に当たっていることが報じられました。日本のペットボトルリサイクルは、海外への輸出に大きく依存してきました。それが、中国の廃プラスチックの輸入禁止で、集めたペットボトルが行き場を失っています。放送はその実態をレポートしました。
◇「混ぜればごみ、分ければ資源」など様々な標語を見聞きしますが、分けた後の「その先」がどうなっているか、関心を持つ人は多くなかったと思います。放送後、「大きな反響があった」と、番組ディレクターさんから知らせてもらいました。
ペットボトルで増えているのは清涼飲料!
◇前回に続き、今回も「クロ現+のちょっと補足」。その2として、ペットボトルで増えているのは何か、お伝えします。なんとなく「そうだろう」と思っていることでも、あらためて数字を理解すると、見えてくるものがあります。
図1
◇図1を見ていただくと、ペット樹脂※1のほとんどが清涼飲料用の容器として使われていることがわかります※2。2016年、清涼飲料が占める率は86%でした。
◇増え方も飛び抜けています。1995年から2016年までの20年強で、約5倍(4.92倍)に増えています。
清涼飲料で増えているのは「水」と「茶」!
◇図2から、清涼飲料の中で何が増えたかわかります※3。ミネラルウォーター類と緑茶飲料が、他を抜き去るように右肩上がりで伸びています。
◇2016年、ミネラルウォーター類の92%、緑茶飲料の96%がペットボトルで販売されています(容量比)※4。ほとんどペットボトルで販売されているわけです。
◇図3は参考として見てください。このグラフにはアルコール飲料は含んでいませんが、最近20年清涼飲料の容器としてペットボトルが大きく増える一方、他の容器、特に缶容器が大きく減少していることがわかります。
「水」と「茶」なら、代替手段はある!
◇図1と図2を合わせて見ると、近年ペットボトルの消費を押し上げてきたのは、ミネラルウォーター類と緑茶飲料であることがわかります。「水」と「茶」、ペットボトルでなければ得られないものではありません。身近に代替手段があります。
◇廃ペットボトルの海外輸出に大きく頼ったリサイクルが壁に当たっていることで、新たな輸出先探しや、サーマルリサイクルの拡大などの動きがあります。それらの対策の前提として、「ペットボトルは必需品で、減らすことはできない」という思いがあると思います。でも、このようにペットボトルの用途と、増えているものが何かを見ていくと、代替手段が見えてきます。「減らすことは不可能」と思う必要はありません。
◇前回、海外輸出されているペットボトルの大部分が「事業者回収」であることを伝えました。次回は店頭でペットボトル回収をされているスーパーマーケット関係者のお話をお伝えします。
- 1 日本では「ペットボトル」と呼ばれるが、海外(英語圏)では、PET(ピー・イー・ティー)ボトル、または単に「プラスチックボトル」と呼ばれる。ここではペットボトルで統一し、PETボトルリサイクル推進協議会のように固有名詞の場合のみ、「PETボトル」と記載する。
- 2 PETボトルリサイクル推進協議会WEBサイト「統計データ」「ボトル用樹脂需要動向」より http://www.petbottle-rec.gr.jp/data/demand_trend.html
- 3 「清涼飲料水関係統計資料2017年度版」一般社団法人全国清涼飲料工業会より
- 4 出典※3と同じ。
- 5 出典※2と同じ。