廃プラ全体では、日本から年何トン輸出されていたの?
前回の「海外向けペットボトルはどこに行くの?」に続き、今回は他のプラスチックも含めて、日本の廃プラ輸出と中国禁輸の影響を示すグラフを作りました。
2017年末以降の中国による廃プラ禁輸の際、マスコミなどで「日本は海外に150万トンの廃プラを輸出している」という文言がよく使われました。中には「160万トン」や、「130万トン」など、様々な数字が報道で出てきました。「どの数字が正しいのだろうか」という疑問を抱いた人もあると思います。「なんとなく世間で使われている数字」に満足するのでなく、実際にどうなのか調べてみました。
今回も前回に続き、元データは財務省貿易統計 普通貿易統計です※。
中国の禁輸で行き場を失った廃プラ
輸出先は多岐にわたっていますが、今回のグラフは、中国(香港を含む)とその他の国・地域との差がわかるように色分けしました。赤・橙・黄色までの暖色系が中国、紫・青・水色までの寒色系がその他の国・地域という色分けです。
2018年以降、暖色系がおおきく減り、寒色系がほとんどを占めるようになっています。細かな数字は表に記載している通りです。中国の割合は、2018年は85.8%でしたが、2018年は9.7%まで下がりました。
上記の「報道されているプラごみ輸出量は正しいか」ですが、2015年は約160万トン、その後少しずつ減少し、2016年153万トン、2017年143万トンでしたので、ほぼ報道通りといえます。
注目したいのは、2018年の輸出量が103万トンで、前年から40万トン減っていることです。中国の廃プラ禁輸を受け、東南アジアなど他の国・地域に輸出先を拡散しましたが、行き場がなく国内各所に滞留した廃プラもあります。もし排出量が前年と同じなら、国内滞留量は約40万トンだったと推定できます。
わからないこともある
「疑問」も残ります。コードの頭「3915」は、「プラスチックくず」を示していますが、「統計の分類は、どこまで正確なのだろう」という疑問です。生産現場から出る「プラスチックくず」は、材質もわかりやすく異物混入も少ないと思いますが、そのような「身元のはっきりした」ものばかりではないはずです。複合材や他の材質の混入もあると思います。この件については、「よくわかない」で済まさせてもらいます。
で、どこに行くのか
輸出先の国別内訳が気になります。特に2018年以降、「輸出」先としてどこが増えたのでしょう。表2は2017年から2018年にかけて、主要輸出先への輸出量の増減を示しています(出典は注参照)。中国が大きく減り、アジアの国・地域の一部が大きく増加していることがわかります。マレーシア、タイ、韓国、インドは約3倍。インドネシアは7.5倍、ミャンマーは35倍、バングラデシュは40倍になります。この中には「海洋へのプラごみ流出が多い」とされている国も含まれています。
「プラごみ流出が多い国に、日本のプラごみリサイクルの経験・ノウハウを輸出するべき」と言う人もいます。しかし、大量のプラごみを輸出しておいて、その国の国民・事業者に「プラスチックの分別・リサイクルは大切ですよ」なんて、あまりにも身勝手な話です。まずは日本に限らず、先進国からのプラごみ輸出圧力を減らすことが大切ではないでしょうか。
(注)
※ 財務省貿易統計貿易統計の「普通貿易統計」「品別国別統計」の「輸出」で下記7品名のコードを入力し輸出量を調べました。期間は7品目のすべてのデータがウエブ上で揃う2015年以降。各年1月から12月までの暦年データ。2019年は5月までのデータ。中国には香港を含む。
プラスチックくず
品名コード
3915-10-000 エチレン重合体 (1988年以降データあり)
3915-20-000 スチレン重合体 (1988年以降データあり)
3915-30-000 塩化ビニル重合体(1988年以降データあり)
3915-90-110 PETフレーク (2015年以降データあり)
3915-90-190 PETその他 (2015年以降データあり)
3915-90-200 プロビレン重合体(2015年以降データあり)
3915-90-400 その他プラくず (2006年以降データあり)
http://www.customs.go.jp/yusyutu/index.htm 2019.6.30