2016年の北極海の海氷は5番目に小さくなりそう
毎年、9月中旬から下旬にかけて、北極海の氷(海氷)が最も小さくなります。2016年の北極海の海氷面積は、観測史上5番目に小さくなるとの予想があります※1。
「5番目に小さい」ということは、今年より小さかった年が4年あるわけですが、それらは、いずれも最近のことです。
(現在の北極海の海氷域については、下のURLで見ることができます。https://ads.nipr.ac.jp/vishop/#/monitor)
図をクリックすると大きくなります。
追記 2016年9月13日北極域研究推進プロジェクトから「北極海の海氷面積が史上2番目の小ささを更新する見込みです」というコメントが発表されました。http://blog.arcs-pro.jp/2016/09/2.html
いずれ北極海から氷がなくなる時がくる?
如何に急激な減り方をしているかは、1980年代の平均と、最も小さかった2012年の海氷を比べるとよくわかります※2。このまま北極海の海氷の減少が続くと、2050年までに、夏の最小期に海氷が消滅するようになるという予測もあります※3。
日本近海の海水温の上昇も台風の大型化など、大きな被害をもたらしていますが、北極海の海水温の上昇と海氷の消滅は、地球レベルの気候バランスと北極圏生態系の崩壊を引き起こしかねません。
北極海の海氷が小さくなることを望む人たちもいる
そんななか、とても気になることがあります。毎年北極海の海氷が小さくなると、それを歓迎するかのような声があがることです。氷が少なくなると、大型船が通行でき、北極海航路が開けるとのことで、「今年は○月○日頃、航路が開けそうだ」との予想が初夏頃からあがっていました。極東からヨーロッパまで船で40日かかるところが、30日で航行できるということで、燃料の節約につながり「地球温暖化防止効果がある」という人がいます。
もう本当に、バカか!と思います。わずかに開けた氷のすき間に大型船が航行することで、海氷の溶解がさらに進むことでしょう。化石燃料の消費が減ったとしても、北極海の海氷溶解が進めば、気候変動は深刻な状況になることでしょう。
環境教育が養いたい批判検証力
別の懸念もあります。日本近海のことですが、油による海洋汚染の発生源は、ほぼ3分の2が船舶によるものです※4。要因として、故意、不注意、破損、海難など があります。故意は論外として、不注意による油汚染は、船が通行する限り有り得ることです。まして、遊離した幾つもの氷山が行く手を阻む北極海航路で、もし海難事故が起これば、取り返しのつかない環境破壊を招くことでしょ う。
結局、北極海航路に期待が寄せられているのは「コスト節減」なのでしょう。はっきりと「それが目的だ」と言えばいいのに、「地球環境の保全」を口実にするのは、本当にやめてくれ、と思います。
こういった「情報」の真偽に対し、批判的な検証ができる力を養うのも環境教育の役割だと思います。
※1 ウェーザーニュース 2016年6月30日より
※2 JAXA水循環変動観測衛星「しずく」の映像より
※3 アメリカ海洋大気庁、米国立大気研究センターなどより
※4 「平成24年の海洋汚染の現状について」海上保安庁、2013より(下2つのグラフの出典も)
堀さん、ご無沙汰しています。ACT53仙台の矢吹真理子です。
FBで色々発信なさっている情報は、マンネリとなった頭に新鮮な刺激を
与えてくれています。
これからもよろしくお願いいたします。
矢吹さん、コメントありがとうございます。励みになります。今後ともよろしくお願いします。