2Rの普及を目的とした市民向け茶会(2R茶会)の実施と成果について
2018年9月12日から14日にかけて、名古屋大学で開催される廃棄物資源循環学会の第29回研究発表で、堀も発表します。テーマは、京都市ごみ減量推進会議で推進している「リーフ茶の普及で、ペットボトルを減らそうキャンペーン」から、「2R茶会」の活動成果。
環境問題、ごみ問題への関心が低下する中、ごみ問題の無関心層にどのように働きかけるか、多くの地域・団体が悩んでいます。また活動内容のマンネリ化、活動層の固定化、イベントの参加者減少などにも悩んでいます。これから紹介する「2R茶会」はこれらの課題解決のヒントとなると思います。
配布資料はここからダウンロードできます。
haikibutsu_shigenjunkan_hori9.12
以降、発表内容
京都市ごみ減量推進会議職員の堀から、「2Rの普及を目的とした市民向け茶会(2R茶会)の実施と成果について」という報告をいたします。
画面提示の以下の順で報告します。
1.事業の推進主体と事業の背景
2.事業目的と本報告の課題
3.実施内容
4.成果と今後について
(各スライドは、クリックすると大きくなります)
1.事業の推進主体と事業の背景 京都市ごみ減
京都市ごみ減量推進会議は、名前に「京都市」を冠していますが、京都市直属の団体ではなく、市内の様々な団体とつくる協働組織で、1996年に設立されました。
事業を推進するため、4つの実行委員会があり、その1つに2R型エコタウン構築実行委員会があります。(委員長、浅利美鈴京都大学准教授)
同実行委では、特にペットボトルのリデュース意識や行動の普及を目的として、2016年秋から「リーフ茶の普及で、ペットボトルを減らそうキャンペーン(以下、本プロジェクトと表現します)」に取り組んでいます。リーフ茶とは茶葉から淹れる茶のことで茶種は問いません。
1.事業の推進主体と事業の背景 事業の背景
報告の背景として、ペットボトル飲料が増え、リサイクルが社会に定着する一方、ごみ減量活動への関心の低下があります。しかし、今でも各地の川ごみ調査で、ペットボトルごみは上位を占め、そのことが近年注目されている海ごみの増加につながっていると考えられるなど、ごみ問題はまだまだ深刻な問題です。そこにもってきて、今年に入って中国の廃プラ、廃ペットボトルの輸入禁止など、今リサイクルが大きくゆれています。
これらの背景情報については、配布資料の後半に資料を掲載していますので、そちらをご覧ください。
2.事業目的と本報告の課題
本プロジェクトの目的は、ペットボトルの利用を切り口に、リデュースを意識した行動を普及することで、関心の高い層、大学生、無関心層に対し、それぞれ下表に記載した活動を推進しています。
この後、無関心層に向けた「2R茶会」について、事業内容と成果について報告します。
ごみ問題への関心や行動の低下
ごみ問題への関心や行動の低下は、環境省や内閣府の調査でも明らかです。スライド6にグラフで示します。
2.事業目的と本報告の課題
無関心層への働きかけを担うのが「2R茶会」です。
リーフ茶を取り上げたのは、スライドに記していますように、
1 ペットボトル飲料の中で,ミネラルウォーターと並んで、緑茶飲料の消費の伸びが大きいこと。
2 京都という土地柄を考慮して,様々な団体からの協力が期待できること。
3 身近な代替手段であり、上質な暮らしの提案とも結びつけやすいこと
などをあげることができます。
3.実施内容
実施内容です。無関心層への働きかけとして、人を集めるのではなく、人のいるところに出向く。しかし、「イベント出展+啓発物品の配布」だけでは、効果不明の取組になります。
伝えるべきメッセージを伝え、意識・行動への反映が期待できる取組が必要です。
そのため、日本茶インストラクターの協力を得て、「本物のお茶の味」を体験してもらい、その後に「2R情報」を伝える一連の「かたち」をつくりました。
人が集まる大きなイベントや観光地に20人程度が入れるテントを設置し、予約はとらず、テント前を通る人たちに声をかけ「おいしいお茶の淹れ方講習」に参加してもらいます。15〜20分の講習の後、5分程度で、緑茶消費の減少とペットボトル緑茶の増加、リサイクルをめぐる様々な問題など「2R」に関する情報をごみ減スタッフ(堀)から伝えています。
4.成果と今後について リデュース意識
成果を報告します。2016年秋以降の実施内容を、配布資料の表2に掲示しています。2016年秋以降1,000人以上の参加を得ることができました。
2018年度に実施した3会場だけを取り上げてみます。324人からアンケートの提出を受けました。結果、「ペットボトル飲料をよく利用する」という人が、受講の前後で、20%から10%未満に減りました。500mlボトル1日1本以上の利用を「よく利用する」としました、
リーフ茶の利用については、「確実に増えそう」が20%。「増やしたいと思う」と答えた人と合わせると、9割近くの人が「リーフ茶の利用を増やそう」と思うなど、意識への影響を与えることができました。
4.成果と今後について 様々な団体との協働
成果の続きです。従来の「ごみ減量活動」では接点のなかった、文化、地域振興などの分野の団体をはじめ、様々な分野との協働が実現しています。このことで、これらの団体のスタッフたちにも影響を与えることができたと思います。
さらには、海ごみ、中国の廃プラ禁輸、脱プラなどの動きともつながり、活動が広がっています。「関心の高い層」への働きかけとして、2018年度は「今こそ脱プラ!」をタイトルに掲げた5回連続の講座を開催します。
4.成果と今後について 「2R茶会」の成果
2R茶会の成果をまとめます。「人の集まるところに出向く」ことで、 2016年秋以降、1,000人以上の参加を得ることができました、この中には、大学への出講講義の受講者は含んでいません。
単に多くの人と接点を持てただけでなく、ペットボトル飲料のリデュース意識の向上という成果を得ました。
「おいしいお茶の淹れ方講習」と合わせることで、「緑茶」を起点に、ペットボトル飲料の増加やリサイクルの現状などに関する、こちらのメッセージへの関心や受容性を高めることができたと思います。
「協働の広がり」については、先ほど申した通りです。
参考 大学生向け「リーフ茶大学講義」の成果
参考として、大学生向けに実施した「リーフ茶大学講義」の成果を紹介します。2017年度京都市内5大学8クラスにゲスト講師として招かれ、925人からアンケートを得ました。結果、講義前約4割の学生が、「ふだんペットボトル飲料をよく利用する」と答えましたが、講義後は8%になり、「少し減らす工夫をしようと思う」との回答が8割近くありました。
現状をしっかり伝え、代替策も提示すれば、リデュース意識を生み出し、発展させることは十分可能であることを示せたと思います。「リーフ茶大学講義」の成果については、2018年8月、日本環境教育学会第29回年次大会で発表しました。【報告内容は、http://wp.me/p7SsLU-gAに掲載しています。】
ご清聴ありがとうございました
ごみ減量活動というと、多くの地域・団体で、内容のマンネリ化、活動層の固定化、イベント参加者の減少などに悩んでいます。何より、参加者数の単なる拡大ではなく、効果ある活動の創出が課題です。2R茶会は、この課題解決のヒントになると思います。
ご清聴ありがとうございました。
このスライド記載の「堀ブログ」で、環境教育学会での発表や、今日の発表を、資料付きで掲載しています。
参考情報
発表中省略した資料は、配布資料の後半に載せています。
「逗子ゼロ・ウェイストの会」の海野保子と申します。市民活動として「エコ広場ずし」の運営ボランティアをしておりますが、廃棄物問題についての学びは浅く、私どもの運動の牽引者であった松本真知子を一昨年失い、今後の活動の進め方にも悩んでおりましたところ・・・Zero Waste Japan Network の堀さま投稿を経てこちらのブログに行き着きました!今後とも、ぜひご指導を賜りたく、恐れながら「新しい投稿・コメントをメールで受け取る・通知」にチェックさせていただきました。宜しくお願いいたします。ちなみに、こちらのブログ読者登録などはできるのでしょうか?
海野様 コメントありがとうございます。
逗子といえば、米軍火薬庫の返還問題当時、富野暉一郎先生(現福知山公立大学副学長)が市長をされていたまちですね。龍谷大学在任時にたいへんお世話になりました。逗子との関わりといえばそれだけですが、勝手に親近感を抱いています。今後ともよろしくお願いします。