分別回収したプラごみは燃やされているの?
多くの市町村で、プラスチック製容器包装ごみ(プラごみ)の分別回収が行われています。よく「分別回収したって、燃やしているだけ」や、「プラごみは、燃やしてエネルギー回収するサーマルリサイクルが最も効率が良い」という人がいます。実際にどのようにリサイクルされているのか、調べてみました。
市町村が回収したプラスチック製容器包装ごみ
市町村は、容器包装リサイクル法に基づき住民からプラごみを回収しています。あくまで容器包装として使用したプラスチックごみです。大部分の市町村は、回収後、異物などを除去(選別)し、まとまった量まで保管し、日本容器包装リサイクル協会(指定法人)と契約した再生業者にプラごみを引き渡しています。
指定法人は、市町村ごと、施設ごとに、入札によってプラごみの引取業者を決めます。入札に参加するのは再生業者で、どの工場でどのような用途に用いるか示して入札します。その時のお金の流れについては、今回は省略します。
最も用途が多いのはマテリアルリサイクル
今回のグラフは、日本容器包装リサイクル協会(指定法人)が公開しているデータのうち、プラごみのリサイクル用途のデータを用いて作成しました※。一番右の2018年度の縦棒を見ると、最も幅の広い水色の部分は「プラ製品」を指しています(42.5%)。プラスチック製品の略で、マテリアルリサイクル(物質リサイクル)のことです。ただしどのようなものに再生されるかというと、輸送用パレットや庭に用いる「模木」などで、「すごいものに再生されている」わけではありません。政策的にマテリアルリサイクルが優先されています。
トータルで最も多いのはケミカルリサイクル
次に多いのは「コークス炉化学原料(コークス炉原料と略しています)」です(40.3%)。プラごみを燃やすのではなく、1,000度から1,200度の高温で蒸し焼きにします。そうすることで、製鉄に用いるコークス、油(プラスチックの原料にもなる)、ガス(発電に用いることができる)を生成することができます。
コークス炉化学原料というリサイクル手法は、ケミカルリサイクル(化学的リサイクル)の一種です。次に多い「合成ガス(10.9%)」「高炉還元剤(6.3%)」もケミカルリサイクルです。これらを合わせたケミカルリサイクル全体では、60%近くになり、最も多いリサイクル用途といえます。
サーマルリサイクルよりは高度な利用
最初の命題=「市町村が、住民から分別回収したプラスチック容器包装ごみは、結局燃やされているの?」に戻ります。ただ燃やすだけでなく、燃やして熱エネルギーを得る、またはその熱で発電をするなどのサーマルリサイクルを含めて見ても、そのような用途は、少なくとも「指定法人ルート」のリサイクル用途からは見えません。
「いやいや実際には燃やしているんだよ…」とまことしやかに言う人もいます。回収量と実際にリサイクルされた量(再商品化量)とは10万トン以上の差があります。異物など「歩留まり」分の処理を強調しているのか、あるいは蒸し焼き(還元)と燃やすこと(燃焼)を同一視しているのかもしれません。いずれにせよ、サーマルリサイクルよりは高度な利用(用途の広いリサイクル)がすでに普及しています。
それでも、リデュース(もとから減らす)が一番
とはいえ、「市町村が回収したプラごみは有効利用されているので、きちんと分別されすればそれでよい」などと、私は絶対に言いません。「蒸し焼き」にするためには、かなりの高温が必要です。エネルギー効率をみた場合、果たしてケミカルリサイクルが「よりマシなリサイクル」かどうか、私にはわかりません。
もちろん、必要性があって使った後のごみは、「しっかり分別して排出する」のは当然のことです。しかし、プラごみの回収、選別は市町村にとって財政上大きな負担であることに違いありません。しかもプラスチック消費量を野放しに増やしてきたことで、近年様々な問題が明らかになっています。まずは、プラスチック多消費社会を見直すことが肝心です。
以上
※ 日本容器包装リサイクル協会
リサイクル事業に関するデータ 再商品化製品販売実績 過去年度販売実績 プラスチック製容器包装
https://www.jcpra.or.jp/recycle/related_data/tabid/511/index.php 2019.8.1確認