第5回「かつての例え、今はどうなの? 自販機の消費電力は原発の発電量に相当」

環境情報も、データ更新が大事

全国地球温暖化防止活動推進センターが、ネット上に公開している「すぐ使える図表」※1をご存知でしょうか。その名の通り、誰もが使える図表が掲載されています。内容も充実しているうえ、毎年新しいデータに更新されています。
一方、生活系の環境情報の中には、かつてよく用いられ、その後どうなのかわからないまま使われている例えもあります。その1つに「日本中の飲料自販機の消費電力は、100万kW級原子力発電所1基の発電量に相当する」や「1台当りの飲料自販機の消費電力は、1世帯のそれに相当する」があります。国内各地津々浦々に広まった飲料自販機の消費電力量の大きさの例えとして、よく用いられていました。
この件、今のデータに更新したらどうなのか、調べてみました。

計算してみた。昔はそうだった。

まずは、原発の発電量と比較した例えが正しかったか検証してみました。定格出力100万kWの原発を、24時間、365日稼働させると、年間約87億8千万kWhの電気を生み出します。定期点検などもあるので、稼働率を80%とすると、約70億kWhになります。(原発は動いてほしくないのですが…)
25年前(1991年)、清涼飲料自販機は全国に200万台近くありました。1台当りの年間消費電力量が約3,300kWhでしたので、年間の総電力消費量は、概算で64億kWhになります。清涼飲料自販機は、飲料自販機の約85%を占めます(他にカップ式のコーヒー・ココア自販機や牛乳自販機、酒類自販機がある)。ですので、飲料自販機全体では75億kWh前後の電力を消費していたと思われます。ただし、なかには故障などでフル稼働していない自販機もあったでしょうし、上記の原発の発電量にほぼ近い消費電力量だったと思われます。

たしかに、清涼飲料自販機の省エネは進んだ

飲料業界、自販機業界ともに、企業努力で自販機の省エネはかなり進んでいます。下の図を見てもらうと、四半世紀前に1台当たり3,300kWhあった清涼飲料自販機の年間消費電力量は、2015年には平均708kWhへと、5分の1近くにまで下がりました※2。かつて「1台当りの飲料自販機の消費電力は、1世帯のそれに相当する」と言われたのが、冷蔵庫2台分にまで下がったわけです※3。
今年(2016年)7月、清涼飲料自販機協議会(業界団体)は、2015年の清涼飲料自販機の総消費電力量を、2005 年と比べて、56.9%削減したと発表しています※4。
表題の「自販機の消費電力と原発の発電量」の例えについて考えると、2016年9月現在稼働してい3基の原発※5は、いずれも定格出力89万kW。稼働率8割とすれば、年間約62億kWhを発電することができます。2015年の飲料自販機の消費電力量は20億kWh強でしたので、例えるなら、原発3分の1程度ということになります。
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だからといって、こんなに飲料自販機要らない!

ここまで飲料自販機の省エネ化の進展を紹介しました。だからといって、「自販機の省エネが進んだから、もう何も問題はない」と言うつもりは全くありません。
まず言いたいのは、「自販機もこれだけ省エネ化したのだったら、原発はもう動かさなくていいよね」ということ。
次に言いたいのは、「儲からないものを無理して設置し続けることないやんか」ということ。
飲料自販機の数は2000年以降、波はありますがほぼ横ばいです。一方、1台当りの年間平均売上金額は、1999年の約130万円をピークに、以後ほぼ一貫して下がっています。2015年は83万3千円ですから、16年間で29万7千円も少なくなりました(下のグラフの青い折れ線が1台当りの売上を示しています)。省エネが進み、同期間に電気代が4万円強安くなっていますが、それを考慮しても25万円ものマイナスです。自販機は立地条件が売上に大きく影響するので、赤字かほとんど儲けのない自販機も多くあると思います。24時間営業のコンビニエンスストアや、深夜営業のスーパーマーケットが増えたなか(これについて別稿で取り上げます)、無理して設置し続ける必要があるのでしょうか。
そしてもうひとつ。たとえ省エネタイプになり、今後もさらに省エネが進むとしても、使い捨て容器の発信源であることに違いはありません。3Rのうち、リサイクルよりリデュースやリユースの優先順位が高く位置づけられていることを考えれば、飲料自販機の台数にも3Rの優先順位をあてはめて考える必要があるでしょう。
まだまだ各所に、2台、3台、それ以上並べて置かれている場所があります。そんな所で、設置台数が半分になっても利用者は不自由しません。赤字や儲けの出ていない飲料自販機も多くあることでしょう。売上も大きく減っています。台数もそれに合わせて減らせば良いのではないでしょうか。
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8台並んだ飲料自販機

※1 「すぐ使える図表」全国地球温暖化防止活動推進センター、http://www.jccca.org/chart/
※2 一般社団法人日本自動販売機工業会WEBより、http://www.jvma.or.jp/enviromental/index.html
※3 「省エネ性能カタログ2016年夏号」省エネルギー庁より
内容量451〜500リットルの間冷式冷蔵庫の平均年間消費電力は343kWh
※4 2016年7月「清涼飲料自動販売機の総消費電力量削減自主行動計画 2015年進捗状況」より
※5 四国電力伊方原発3号機、九州電力川内原発1号基、2号機

 

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