第12話 自販機がまちに数多くあるのは「治安がいいから」?

いつから言われだしたの?

環境情報って、いろんなフィルターがかかっている場合があります。いろいろ例をあげることはできますが、タイトルにあげた「飲料自販機がまちに数多くあるのは、日本の治安がいいからなのだ。外国は治安が良くないから、街頭に自販機など置けないのだ。」について、考えたいと思います。
まず、いつからこのようなことが言われるようになったのでしょう。1994年にヨーロッパに行ったことがありますが、その時すでに、このようなことを聞いていたので、少なくと1990年代前半、あるいはさらにさかのぼって、1980年代後半の飲料自販機急増期から「飲料自販機がまちに数多くあるのは…」と言われていたのではないでしょうか。

ヨーロッパのまちで「ウソだ」と感じた。

ドイツの街中を歩いていて。ぴっくりしました。何にびっくりしたかというと、ふつうに自販機があったことです。日本でいえば「ガチャガチャ」のような手動式のもので、ガムやキャンディー、タバコ(当時はまだヨーロッパでも規制は強くなかった)の自販機は街中でもよく見ました。おそらく電気不要で、特定の硬貨だけ有効で(つまりおつりに対応していなくて)、商品の取り出しも、レバーを手動で押し下げて出す、といったかなり原始的なものでした。ですが、「治安が悪いから外国の街頭には自販機がない」というのは事実ではありません。むしろこのような原始的な自販機の方が壊しやすく、中のお金を盗みやすいのではないかと思いました。
少ないのは、電気を使う飲料自販機。たしかに街頭で見た記憶はなく、駅や空港など建物構内にありました。

この写真を見てください。

2001年にスウェーデンに行き、またびっくりしました。下の写真は数年後に他の人にノルウェーで撮ってきてもらった写真ですが、私がびっくりしたのと同じような光景です。
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建物の壁に向かって女性が何かしています。手前は歩道で、たまたま人は写っていませんが、市街地内ですので、ふつうに人が行き交っている場所です。その手前(写真には写っていない)は車道です。同じ写真を拡大してみましょう。

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何をしているかというと、ATMで現金を引き出しています。横を当たり前のように、人が歩いているのです。日本じゃ見ない光景です。もちろん「これはいいことだから、日本もこうあるべき」など、全く思いませんし、これをもって「日本より治安がいい」ともいいません。
ただ、「外国は治安が悪いから、自販機が街頭にない」というのは事実ではありません。治安を問題にするなら、こんな街中のむき出しの場で現金を降ろすことなどできないでしょう。前述のように電気を使わない自販機なら、街頭にもあります。諸外国の人たちに対して、なんとも失礼な話だと思います。

情報を見極める力

私のブログで、題材や切り口を変えて伝えていることは、環境情報に限らず、情報を吟味し「本質」を見抜く力の大切さです。次の写真も見ていただきましょう。日本国内のある都市で撮ったもので、15台飲料自販機が並んでいます。撮ったのは2012年10月、福島原発事故からわずか1年半後の撮影です。夜も煌々と照明が点いていました。「治安が良いから街頭に自販機が多くある」というより、「節度がないから多くある」と思えてなりません。
今話のはじめに「環境情報にはフィルターがかかる」と書きましたが、今回取り上げた「自販機がまちに数多くあるのは治安がいいから」というのは、街中に必要以上に多くの自販機があっても、それに疑問を持つことなく、むしろポジティブに感じさせるためのフィルターに感じます。で、「誰がかけたフィルーターか」ですって。決まっているじゃないですか…。
多くの人が海外に出ています。観光地や空港、駅だけでなく、人々が暮らしている場所にも眼を向ければ、日本で「当たり前」と思われている情報の真偽が見えてくると思います。大事なのは、自分の眼。自分の感性。(了)

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飲料自販機の消費エネルギーや売上については、第5話「かつての例え、今はどうなの? 自販機の消費電力は原発の発電量に相当」をご参照ください。

 

 

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