第13話 野菜の旬の変化を具体的に見ると

食べ物の旬と環境問題

今回からこれまでと趣きを変えて、食べ物と環境についてテーマにします。
最近といわず、何年も前から「食べ物の旬がわからなくなった。」「旬を感じなくなった。」などの声を聞くようになりました。食べ物の旬と環境問題には様々なつながりがあります。環境教育プログラムの中にも「食べ物の旬当てゲーム」があるように、「食べ物の旬を知る」ことは環境教育のテーマとしてもよく取り上げられます。
ところが、どのような食べ物の旬がどのように変化したか、あまり知られていません。「なんとなく」ではなく、具体的にどのような変化があるか見ていくと、最近の私たちの暮らしぶりと社会のあり様が見えてくると思います。

かぼちゃを例に見ていくと

グラフ1は、東京都中央卸売市場に入荷したかぼちゃの量(重量)を、月ごとにあらわしたものです。1970年(昭和45年)を青い線、20年後の1990年(平成2年)を黒の破線、2010年(平成22年)を赤の破線、2015年(平成27年)を緑の実線であらわしています。
1970年といえば高度経済成長の絶頂期。大阪の千里丘で万国博覧会が開かれ、「きっと日本はこれからも限りなく発展するだろう」と思われた時です。世の中が大きく変わった時代でしたが、農産物については、まだ本来の旬が残っていました。おわかりのように突出して夏の入荷が多く、それ以外の季節と大きな差がありました。
入荷量の変化は、ほぼそのまま消費の変化を反映していると考えられます。1970年代以降、夏以外の季節の入荷が増え、2015年には本来の旬以外の入荷の方が多くなっています。言うまでもなくかぼちゃの旬は夏。「冬至にかぼちゃを食べると、病気にならない」と言われますが、これは秋に穫ったかぼちゃを保存して食べていたもの。ですが、いつしか「かぼちゃの旬は冬」と思う人もあらわれています。たしかに、寒い時期に食べるホクホクのかぼちゃは、身体を暖めてくれますが、本来の旬とは違う時期の利用が、旬より多くなっています。

かぼちゃの旬グラフ毎月入荷1

グラフ1 クリックすると大きくなります。

旬以外のかぼちゃはどうやって入手している

よく「季節はずれの野菜はハウス栽培で作られる」と言われます。かぼちゃの場合は事情が違います。グラフ2は2015年のかぼちゃの輸入量を月ごとに表しています。グラフ1は東京都の数字ですが、こちらは全国の数字です。ベースは違いますが、季節が正反対の南半球のニュージーランドやトンガから、旬とは正反対の季節に数多く輸入されていることがわかります。私たちの「季節はずれの生活」は多くのエネルギーを費やして成り立っていますが、かぼちゃの場合、何千キロもの距離を運ぶため、多くの輸送エネルギーを必要としています。

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グラフ2 クリックすると大きくなります。

旬はずれに食材が得られることは良いことか

本来の旬と違う季節でも食材を入手することができるようになりました。これも新たな需要創造だと言えるでしょう。ニュージーランドの農家が進んでかぼちゃを栽培し、日本に売り込んできたとは思えません。日本の商社が現地の農家と契約し、日本向けに日本人の好むかぼちゃの品種を栽培させ、日本では生産できない時期に出荷し販売する。そのようなビジネスモデルを作るため、日本国内では、旬以外の消費の増加を働きかける。これによって潤っている人もいるわけですが、ただ、このビジネスモデルが永続できるのか疑問もあります。
グラフ3を見てください。東京都中央卸売市場に入荷するかぼちゃを、季節ごとの入荷量をまとめて棒グラフで示し、年間入荷量を折れ線グラフで示しています。それを5年刻みで示しました。
これを見ると、1975年以降2000年まで、旬以外の入荷(≒消費)が増え、かぼちゃの年間入荷量(≒消費量)も着実に伸びています。ところが旬以外の入荷が増え、どの季節でも入手できるようになると、年間入荷量(≒消費量)が急落します。実はこういう傾向は他の野菜にも見られるのです。
たしかに、旬以外の入荷が増えると全体の消費も増えます。ところが「旬がわからなくなると消費が減る」のです。単に「野菜離れ」で説明がつくのでしょうか。どうもそれだけではないように思います。
次回は他の野菜を見ていくことにします。

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グラフ3 クリックすると大きくなります。

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