第26話 海ごみの話その4 「海ごみの発生源対策」

海ごみの話その1〜3で、海ごみの実態、影響、私たちの暮らしとのつながりについて書きました。今回は海ごみのうち、プラスチックごみの発生抑制の取組について紹介します。

マイクロビーズの規制

海ごみの話その1で、海洋を漂流するプラスチックごみのうち、5mm以下のものがマイクロプラスチックと呼ばれていることを紹介しました。
マイクロプラスチックの中には、洗顔剤や歯みがきなどに含まれる研磨剤(スクラブ)などのマイクロビーズ、化学繊維衣料の洗濯時に出る細かなくず(マイクロファイバー)などがあります。
このマイクロプラスチックのうち、マイクロビーズについては、すでに様々な規制等があり、これまでに多くのメディアが取り上げられていますので、ご存知の方も多いと思います。
アメリカでは、2015年12月28日、マイクロビーズ除去海域法が成立し、研磨剤としてマイクロビーズの入った製品の製造は2017年7月1日から禁止されました。2018年7月からは販売も禁止されます1
イギリス政府は、2016年9月3日、化粧品やボディケア用品などへのプラスチック微粒子「マイクロビーズ」の使用を2017年末までの間に禁止する政策を発表しました2
こうした動きは、フランス、スウェーデン、オランダ、アイルランドなどの欧州各国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどにも広がりつつあります3
日本の場合、企業または業界団体による自主的な規制として、マイクロビーズの使用規制が広がっています。主要メーカーでは、花王は2016年5月、同年末までに全廃することを発表。ライオンは2000年以降使用せず、サンスターも使っていないとのことです4。資生堂も2014年4月以降開発した洗浄剤にはマイクロビーズを配合していないとのことです5

マイクロファイバーの流出を減らそうとする取組

簡単ですが、マイクロビーズの使用規制について紹介しました。マイクロビーズは、工業製品である洗顔料や歯みがきなどに意図的に入れていたものであり、他のプラスチック製品と比べて、規制の網がかけやすいこともあげられます。
マイクロファイバーの場合はどうでしょうか。タオル、食器拭きやメガネ拭き用クロス、寝具、衣料など、少し前まで天然繊維が使われていた分野に、今では幅広くプラスチック製品が使われています。それらのうち衣料品やタオルは、洗濯や風呂での使用など、下水と直結する場で使われます。繊維の小片が下水とともに流れ、下水処理場で捕捉されず処理水とともに放流され、やがて海ごみになります。
マイクロファイバータオルは、プラスチック製であり、肌の弱い人や幼児には使わないにこしたことはありませんが、すでに多く出回っています。衣料についても、フリースをはじめ軽くて使い勝手がよい化学繊維製衣料が多く出回っています。これらを全て天然素材に変えることは困難です。

そのようななか、アウトドア用品メーカーのパタゴニアは、次のような取組を進めています6
・洗濯中のマイクロファイバーの抜け落ちを少なくするための調査研究を素材メーカーや大学と始める。
・化学繊維衣料を購入する客に、海ごみ問題やマイクロファイバーをできるだけ出さないための手入れや洗濯の仕方を伝える。
・アメリカやヨーロッパのパタゴニアは、マイクロファイバーの流出を大幅に減らすことができる洗濯用フィルターバッグを開発し、客に原価で販売する7
化学繊維を用いた衣料の供給者として、できるかぎりの責任を果たそうとしています。こういった取組や環境保全の姿勢が他の衣料供給者にも広がってほしいものです。

放置ペットボトルの多さ、リサイクルの限界

前回取り上げたペットボトルはどうでしょうか。前回「その3海ごみと私たちの暮らし」の報告の中で、荒川や淀川水系の保津川など、河川清掃で最も多く集まる川ごみが飲料ペットボトルであることを紹介しました。放置ペットボトルが多いのなら、今まで以上に分別・リサイクルを徹底し、河川をはじめ地域清掃に努めれば良いのでしょうか。しかし,すでに国内のリサイクル産業の手に余るほど,ペットボトルが回収されています。
図1は,PETボトルリサイクル推進協議会の2015年度年次報告書のデータをもとに作成したものです8。これを見ると,日本国内で回収されているペットボトルの4割以上が海外(主に中国)に持ち出されてリサイクルされていることがわかります(京都市が市民から回収した使用済みペットボトルは,全量国内でリサイクルされています)。

graph7図1(クリックすると大きくなります。)

いつまで続く「役割分担」

海外に輸出されたペットボトルは安い工業原料として活用され,日本向けの製品にも一部使われていることでしょう。このことについて,「海外から求められるほど高い品質で排出されている」や「どこで利用されてもリサイクルされていることに変わりない」として肯定的に見る考えもあります。
ただ,こういった関係が永続できるのか考える必要もあるでしょう。今は「資源として輸出」していますが、いつまで廃ペットボトルの輸出ができるかわかりません。最大の輸出先の中国の動向次第では、日本国内で回収された多くのペットボトルが行き場を失います。2017年7月中国政府は、同年内をもって海外からのごみの輸入を停止することを世界貿易機関に通告しています。そのなかには廃プラスチックが含まれ、今後の動向に注意が必要です9
では,国内のリサイクル産業の受入能力を高めたらよいのでしょうか。そのためにはリサイクル製品の需要を増やさないといけません。それが難しいことが海外輸出につながっています。

放置防止・流出防止策はリサイクルだけではない

前回「その3海ごみと私たちの暮らし」の報告の中で、日本国内各地に漂着するペットボトルの製造国を調べたグラフを示しました。その中の沖縄県石垣市での調査のグラフを抜き出しました(図2※10)。
中国からの流出ペットボトルが他を圧倒していますが、すぐ西の台湾製ペットボトルがわずかしかありません。海流の方向など考えれば、台湾製ペットボトルが多くを占めていてもおかしくありません。なぜでしょうか?
台湾では1988年廃棄物清理法の大幅改正により、使用済みのアルミ缶、スチール缶、PET ボトル、ガラス瓶の回収義務が容器メーカーの義務とされ、1992年からは飲料ペットボトルに対する強制デポジット制度が施行されています※11
空き容器は店に返し、デポジット(預かり金)の返還を受ける、この仕組を採用している台湾からペットボトルの流出がほとんどない※12ことは注目されます。

漂着ペットボトル製造国別割合(石垣島)図2(クリックすると大きくなります。)

使い捨てプラスチック用品削減の取組

日本ではペットボトルに限らず、使用済みプラスチックの回収とリサイクルに力を入れてきました。しかし消費量の拡大には、あまり目が向けられてきませんでした。リサイクルが進んでも多くの流出ごみがあるのなら、デポジットのように、より確実に回収される仕組の検討も必要ではないでしょうか。何より増え過ぎたプラスチック製品の消費抑制も考える必要があるのではないでしょうか。
ただ、使い捨てプラスチック用品の多くは短期間で用済みとなる厄介なものですが、「便利」の名のもと、多く使われるようになりました。本来代替の道具や手段があり、使用を抑制することはできますが、「できるだけ使わないようにしよう」という呼びかけだけでは削減に結びつく効果は期待できません。
その点、隣国韓国は、プラスチック製品に限らず使い捨て用品を「一回用品」と呼び、何度も使える「多回用品」と区別し、1990年代から流通企業や加工食品メーカーを対象に、使用や製造に規制処置を取ってきました13。プラスチック製の容器包装で例をあげると、小売店でのレジ袋、コーヒーショップを含む食堂等のプラ製カップや使い捨てスプーン、ナイフ、フォーク、食品メーカーのプラ製容器、ホテルや銭湯での使い捨て型歯ブラシやひげ剃り、くしなどのアメニティ用品、他ほぼ全業種を対象にしたプラ製使い捨て広告宣伝物など広い範囲に対して、無償提供の禁止や使用抑制などを定めています。

そして、使い捨てプラスチック製容器の使用禁止へ

フランスでは2016年7月にレジ袋の配布が禁止になったのに続き、2016年9月には使い捨てのプラスチック製カップや皿を禁止する法律を世界で初めて制定しました。この法律は2020年1月に施行予定で、すべての使い捨て食器類について、家庭用コンポストで堆肥にできる生物由来の素材を50%使うことを義務付け、2025年までにこの割合を60%に引き上げることを定めています14
様々な取組がありますが、日本は市民の高い環境意識に支えられリサイクルを普及・浸透させてきました。ただ、リサイクルの仕組のないプラスチック製品も多く、まちにも暮らしにも使い捨てプラスチック製品があふれ、放置プラスチック製品の多さはこれまでにお伝えした通りです。
どこか特定の国を真似る必要はありませんが、日本が採っている仕組・取組が全てでないことは確かです。海ごみのもとになるプラスチック製品について、リサイクルや散乱防止だけでなく、使用抑制の動きが出ていることがもっと知られるべきでしょう。
「2050年には,世界の海の魚より,漂流プラスチックり方が多くなる(重量)」という予測が現実にならないようにするために。(以上)

これまでの海ごみ記事
海ごみの話その1 海ごみの実態
海ごみの話その2 海ごみの影響
海ごみの話その3 海ごみと私たちの暮らし

出典
※1 Eco Watch「Victory: Obama Signs Bill Banning Plastic Microbeads」,2015年11月28日 https://www.ecowatch.com/victory-obama-signs-bill-banning-plastic-microbeads-1882138882.html
【日本語のニュースでは以下などがある。】
IT Mediaビジネスオンライン「世界が販売禁止に乗り出す、“つぶつぶ入り洗顔料”の何が危険なのか」,2016年1月28日 http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1601/28/news025.html
※2 BBCネットNews「Plastic microbeads to be banned by 2017, UK government pledges」,2016年9月3日 http://www.bbc.com/news/uk-37263087
【日本語のニュースでは以下などがある。】
Sustainable Japan 「英国政府、プラスチック粒子「マイクロビーズ」の使用禁止政策を発表」,2016年9月16日 https://sustainablejapan.jp/2016/09/19/microbead-banned-in-uk/23536
※3 JFE テクノリサーチ株式会社「平成28年度化学物質安全対策(マイクロプラスチック国内排出実態調査)報告書 平成28年度経済産業省委託調査」3.5.1 海外規制動向より、2017年2月
※4 毎日メディアカフェ「実はこんなにやっています!プラスチックゴミ対策~発生抑制や有効利用~」、2016年8月25日 http://mainichimediacafe.jp/eventarc/1033/
※5 資生堂ウェブサイト「サステナビリティ▷環境▷環境リスクへの対応」より http://www.shiseidogroup.jp/sustainability/env/management.html
※6 パタゴニア「マイクロファイバー汚染に関するアップデート」より、2017年2月23日 http://www.thecleanestline.jp/2017/02/an-update-on-microfiber-pollution.html
※7 パタゴニア日本支社ではまだ販売されていない。
※8 PETボトルリサイクル推進協議会「2015年度年次報告書」より
※9 Record China「海外からのごみ輸入にノー!中国がWTOに通告=日米が最大の排出国―海外メディア」、2017年7月20日 http://www.recordchina.co.jp/b184940-s0-c20.html
※10 環境省「海洋ごみとマイクロプラスチックに関する環境省の取組」海洋ごみシンポジウム配布資料より,2016年12月
※11 財団法人社会経済生産性本部「平成12年度 循環型経済構築に係る内外制度及び経済への影響に関する調査(リサイクルの規制手法調査)-海外調査編-報告書」より、2001年3月
※12 原田禎夫(大阪商業大学准教授)「まだまだ多いポイ捨てペットボトルをどう減らす」、http://kyoto-leaftea.net/merit/merit-33/
この中で、舞鶴市沿岸での漂着ごみ調査で,漂着ペットボトルのほとんどが日本製で、中国製や韓国製も見つかるが,台湾製ペットボトルは見つからないことを報告されている。
※13 瀬口亮子、山川肇「韓国の一回用品使用規制と我が国におけるしくみづくりの可能性」、第24回廃棄物資源循環学会研究発表会資料より、2013年11月 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmcwm/24/0/24_23/_article/-char/ja/
※14 CNN.com 日本版ニュース「フランス、プラスチック製の使い捨て食器を禁止へ 世界初」2016年9月20日 https://www.cnn.co.jp/world/35089279.html

WEB情報は、いずれも2017年7月20日から8月8日にかけて確認。

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