第31話 中国青島市訪問報告その3「社会の変化の早さ」

成長のスピード

10月19日(木)から22日(日)にかけて、中国青島市で開催された「日中生活ごみ分別及び減量化対策に関する研究ワークショップ」に参加しました。中国青島市で見たこと、感じたことをお伝えします。その1「まちの美しさ」その2「スケールの大きさ」に続き、その3のテーマは「社会の変化の早さ」
■pまずは青島市内の交通から。青島市の市街地の公共交通は、地下鉄線とバス。バス停にダイヤ表示はなく、始発と終発のみ記されていました。そのかわり次々とやってきます。しかも市街地で見かけたバスはすべて低床バス。ただし地下鉄線は1路線のため、市内の足の主役は自動車です。
■p地下鉄は現在市内各所で新設・拡張工事が行われ、数年のうちに13路線になるとのことでした。数年で12路線の新設! 日本では考えられないことです。
■pまた、国内各所で猛烈な勢いで延伸工事が続けられている中国版新幹線も、青島市のすぐ近くまで伸びていて、その建設工事を目の当たりにしました。建設中の巨大構造物が延々何kmも続いていました。

2017.10青島市まちなみ40《写真1 建設中の新幹線》

経済のハイテク化

■p最近、東芝のテレビ事業が中国のハイセンスという企業に買収されるとのニュースが流れました。このハイセンスと、三洋電機の白物家電部門を買収したハイアールの本社は青島市にあります。
■p青島市は港湾都市ですが、日本の港湾都市でよく見る重厚長大産業ではなく、ハイテクのまちとして発展しています。郊外にいくと数年前まで操業していたと思われる高い煙突を備えた工場がもぬけの空となり、新たにハイテク工業団地が建設されている光景も見ました。
■p青島市は、あくまで中国の1都市ですが、産業の高度化は、ある面これからの中国の姿。中国の将来像をこのまちで見たように感じました。

2017.10青島市まちなみ39《写真2 空になっている工場》

まちを走る自動車がどれも新しい!

■p青島市では人々の暮らしの豊かさも感じました。前回、郊外には同じ形をした30階建ての超高層住宅が延々と並んでいたと伝えました。建物の空間効率の高さ、規格化によるコストカット、そのうえ基本的に土地が国有(しかも平野が多い)となれば、住居費は日本と比べてはるかに安くなることでしょう。そのうえ食費も安く、可処分所得比率の高さが伺えます。
■p青島市で驚いたことの1つに、まちを走る自動車の新しさと大きさがあります。日本でいえば3ナンバークラスが当り前。電気自動車も若干ですが見かけました。一方、年式を感じさせる古い自動車は郊外に行かないと見られませんでした。そのことを地元の人を言うと「最近一気に普及したため、どの車も新しいのだ」とのことでした。
■pちなみに、青島市内ではドイツ車を多く見かけました。地元の人に「青島ではドイツ車が人気なのですか」と尋ねたところ、「いやいや日本車も人気だ。中国国内で売れている自動車は、国産車、日本車、ドイツ車、アメリカ車、韓国車の順で、青島でも変わらない」と答えてくれました。

2017.10青島市まちなみ2《写真3 建設が続く30階建て超高層住宅》

2017.10青島市EV車1《写真4 道端で充電していたEV車》

中間層の確実な成長

■p市街地には、居住者しか入ることができないプライベートエリアが幾つもありました。日本にもあるオートロックマンションとの違いは、何棟ものマンションと、そのまわりのエリアを含めて厳重に壁で仕切られ、出入り口には見るからに屈強な警備員が、複数常駐していることです。
■p青島市のごみ分別モデル地区になっているプライベートエリア(中海銀海団地1号)を訪ねました。そこは11棟の高層住宅に1,200世帯、2,500人が暮らし、エリア内に店舗も幼稚園もありました。行政によるごみ回収は、1日に2回来るとのことで、これだけの人口があれば、この頻度で回収しなければ追いつかないのだろうと思いました。ちなみに空き缶やその他の金属、ペットボトル、古紙など、資源物の回収は、行政ではなく民間の回収業者に委ねられていて、それは中海銀海団地1号でも同様でした。
■pこのマンション群で暮らす人たちを見て感じたのは、居住者が特別な富裕層ではないこと。もちろん比較的裕福であることに間違いないと思いますが、このようなプライベートエリアが幾つもあることから、中間層が確実に成長・拡大していることを感じました。

2017.10青島モデル団地13《写真5 中海銀海団地の遠景》

小康社会

■p経済成長の著しい中国では、すでに都市居住者が6億人を越えたとのことで、全国民の半数に迫っています。都市から排出される生活系ごみだけでも、1日66万トンにもなります。
■p都市の拡大や中間層の成長は、政府に「生活環境改善」を課題として強く意識させることになりました。まだまだ経済成長一辺倒の国かと思いきや、日々大量に排出されるごみを如何にマネージメントするか、そのために市民(特に都市居住者)の協力をどのように引き出すか、青島市に限らず、中国全土で大きな課題として意識されています。青島市が私たちを京都から招いたのも、この課題に向き合うヒントを得るためです。
■p「生活環境改善」と並んで、青島市職員や研究者たちのプレゼンや懇談会で、「小康社会」という言葉が何度も登場しました。産業の高度化や都市基盤の整備が進展していることへの自信の表れと感じましたし、急速な経済成長に頼らなくても成り立つ社会への移行が意識されていると感じました。
2017.10青島市懇親会8《写真6 青島市関係者との懇談会》

ごみ回収の現場では

■pごみ問題との関わりで言うと、青島市内を走るごみ回収車は、民間委託を含めて約800台。その全てにカメラとGPSが備わっていて、各車がどこでどのような作業をしているか、どのルートを走っているか、市役所内の大型モニターですべてリアルタイムに把握でき、かつ記録されるようになっています。市内に交通渋滞を起こさないため、回収作業ができる時間帯が決まっていて、時間外に回収をしていないか、ルート外の抜け道を通行していないか把握できるようになっています。
■pプレスパッカー車を使っているのは日本と同じですが、大きく違うのは、2〜3名の作業員が同乗せず、回収車の後ろをバイクで付いて走ることです。道路脇の収集場所に置かれたごみを見つけると、バイクを停め、ごみを回収車に投げ入れ、また回収車とバイクで次の収集場所へ走るというものでした。運転手は降りずに運転に専念します。このバイク追走回収は1970年代から実施しているとのことでした。
■p先に紹介した回収車のモニタリングシステムには、同行した京都市職員も驚いていましたが、青島市の担当者曰く、「青島市よりもっと精緻なシステムのある都市もある。青島市でも、交通局の市内交通モニタリングシステムは、これより進んだシステムだ」とのことでした。

2017.10青島市懇親会7《写真7 ごみ回収車モニター》

青島訪問ごみ回収《写真8 バイク追走によるごみ回収》

資源ごみ回収の担い手不足

■p前述のように、空き缶やペットボトル、金属、ガラスなど資源として活用できるものは、行政ではなく、民間の回収業者が集めています。市場原理に委ねた回収です。
■pここからが今回最も伝えたかったことです。ここまで述べたように、中国でも産業の高度化、中間層の成長などが近年急速に進んでいます。建設工事も各所で盛んで、消費欲も旺盛。選り好みしなければ仕事はいくらでもあります。しかも長く続いた一人っ子政策のため、多くの若者が高等教育を受けています。中国では空き缶やペットボトルなどの資源ごみ回収は、市場原理に任されてきました。「市場原理」とは都合の良い言葉で、市況の影響を受けやすい収入の不安定な仕事です。その仕事にあたる人たちの高齢化と担い手不足が深刻になっています。このことの日本への影響を考える必要があると思います。
■p青島市では、郊外の国道沿いで廃品回収業者の建物を見ました。市街地の発展から完全に取り残された感を受けました。回収したペットボトルを運んでいたトラックも見ましたが、荷台から上・左右・後ろに大きく張り出した袋を積んだそのトラックは、かなり年季の入った代物でした。
青島ごみ回収2《写真9 まちで見かけた光景》

ペットボトルは生産者責任の強化へ

■p回収業者が高齢化し、新たな担い手がいないのなら、日本のように、市民に空き缶やペットボトル、ガラス、その他金属などを分別排出してもらい、行政が回収する仕組みを作ればよいのでしょうか。
■p当然ながらそのためには多くの税金が必要です。日本の場合、全国の自治体が資源ごみ回収に要している費用は、容器包装だけに限っても約2,500億円になります
■p中国が自治体回収に踏み込むか、私にはわかりません。青島市職員や研究者にこのことを尋ねました。ペットボトルの増加とその対応は、中国でも深刻だという認識とともに、「生産者責任の強化が必要」という声が返ってきました。こちらからは、日本の容器包装リサイクル制度は事業者負担が軽く、行政負担が重いことを紹介しました。京都から多くの情報を得たいと私たちを招いてくれた青島市に対して、この件に関しては「日本よりもっと良い仕組みを作ってください」と伝えました。(つづく)
2017.10青島市スーパー8《写真10 飲料も調味料もペットボトルが主役。スーパーでリユースびんを見かけることはなかった》

※ 日本経済新聞「自治体、容器ごみ分別費2500億円 10年度推計 企業と格差」2014年5月27日配信
https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2703T_X20C14A5CR8000/

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