第32話 中国青島市訪問報告その4「中国の本気」

今回で青島市報告最終「これだけは報告しておきたい」

前回のブログ更新から1ヶ月以上空きました。10月の青島訪問から2ヶ月近くが経ちましたが、今回の内容は「これだけは報告しておきたかったこと」です。
青島訪問中、青島市政府関係者から、「生態文明」や「自然との共生社会」などと並んで、「小康社会」という言葉を何度も聞きました。中国が、急速な経済発展とそれに伴う都市の拡大の一方、安定社会への移行を重要な課題として意識していることが伝わってきました。「小康社会」を実現する要素の一つとして、生活環境の改善があり、急増する都市ごみのマネージメントも重要課題として位置づけられるようになりました。
今回は2000年頃から現在まで、どのような施策や制度整備が行われたか、10月の青島訪問で得た資料をもとに、年表的に記します。本ブログの第28話「中国の廃ペットボトル輸入禁止について(http://wp.me/p7SsLU-aJ)」で、中国が2017年内をもって、海外からのごみ輸入を停止すると発表したことを伝えましたが、こういった発表や方針は唐突に出てきたものでなく、大きな流れの一部として出されたものです。
今回のタイトルは「中国の本気」。たかが「ごみの分別」と侮るなかれ。この国は、善し悪しは別にして、1度決めたら物事の進展が早い。巨大な市場を背景に、都市ごみのマネージメントから一大産業も生まれつつあります。いつまでも中国が環境対策に後ろ向きな国と思っていると、大事なことを見落とすことになります。

2000年以降の中国国務院住建部の動き

◇2000年から2010年頃まで。
中華人民共和国 国務院 住宅城郷建設部(以下、住建部)が、北京、上海、広州、深圳、杭州、南京、廈門、桂林の8都市において、生活ごみ分別パイロット事業を行う。

◇2003年10月
住建部、「城市生活ごみ分別識別基準」を公表。(城市は都市のこと)
ごみ分別施設において、再生可能資源、有害ごみ、他のごみと分別するための識別基準を策定。

◇2004年
住建部、「城市生活ごみ分別方法および評価基準」を公表。
ごみ分別の方法と評価基準について解説した。分別収集率、資源回収率の他、住民による分別方法の認知率、参加率などが評価指標として規定された。

◇2010年頃から
北京、上海、広州、杭州、天津、南京、蘇州で、あらためて生活ごみ分別パイロット事業が行われた。(2000年からのパイロット事業が十分浸透しなかったためと言われる)

2016年以降の動き

◇2016年3月18日
国務院住建部「生活ごみ分類制度実施法案」を公表。
同法案による2020年までの全体目標
・ごみ分別に関する法規制と法体系の構築がほぼ完成されていること。
・生活ごみ分別モデルを,他地域へ展開可能とする
・生活ごみに対して強制的分別制度を実施し、生活ごみの回収利用率が35%以上に達すること。
同法案の中で,「市民参加」「協働推進」などが,推進の理念として示される。

◇2016年6月
国家発展改革委員会と住建部が「ごみ強制分別制度(案)」を公表。
対象は国営企業や公共部門
実施範囲は,政府直轄市、省政府都市、計画単列市(経済の面で省と同等の権限を持つ都市),最初に選定された生活ごみ分別のパイロット拠点回収都市。

◇2016年12月25日
国務院「拡大生産者責任制度執行案」を公表。
生産者に資源環境に対する責任を、製品の生産段階から全ライフサイクルに拡大すると表明。

◇2017年3月18日
国務院住建部「生活ごみ分類制度実施法案』を公表。

青島市で配布された資料には,「ごみ分類事業は、 2016年から国家レベルの政策に含まれて、推進されている。」と記載されている。

中国青島市訪問報告その4「中国の本気」以上

※第29話以降の青島市訪問報告では,同行いただいた龍谷大学政策学部准教授金紅実先生および同大学政策学研究科院生趙迪氏による現地資料の翻訳を参考にさせていただきました。ありがとうございます。

2017.10青島市モデル団地2a
青島市内のモデル団地でのごみ分別箱
赤(紅)は有害ごみ、青(藍)は資源ごみ、黒はその他、緑は厨芥(生ごみ類)
背後は「緑色環境(良好な環境) ごみ分別」

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第30話 中国青島市訪問報告その2「スケールの大きさ」
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