北極海航路への期待の恐ろしさ

北極海の海氷の減少

2016年9月、このブログで「『環境保全』を口実にした情報の真偽 北極海航路が温暖化防止に?」という記事を書きました。北極海の氷が小さくなって、大型船舶が航行できるようになれば、アジアとヨーロッパを結ぶ航路は、従来のスエズ運河経由で約40日かかるのが、30日に短縮され、燃料の節約とCO2削減ができる、と言っている人がいることを紹介しました。
でも北極海を船舶が行き来すれば、さらに海氷の溶解が進み、気候バランスが崩れて、たいへんなことになる、とも書きました。その記事から4年弱、北極海の海氷はどうなったでしょうか。Arctic Data archive System(ADS、https://ads.nipr.ac.jp/)の公開情報から見てみましょう。

1980年代の平均と2019年の北極海の海氷の比較

毎年9月の中頃から月末にかけて、北極海の海氷が最も小さくなります。9月20日の北極海の海氷を、1980年代の平均と、2019年の北極海の海氷を比較したのが以下の図です。白は2019年の海氷、その外側の点線は、1980年代の海氷の平均面積です。ずい分と小さくなっていることがおわかりいただけると思います。

1980年代の平均と2002年9月20日の北極海の海氷の比較

2002年から2019年までの北極海の海氷

年によって増減はありますが、2002年以降の海氷を見るだけでも、はっきりと小さくなっているのがわかります。2010年代に入ると、北極海に船舶が航行できそうな氷の隙間ができています。
2050年までに、夏の最小期に海氷が消滅するようになるという予測もあります※。北極海の海水温の上昇と海氷の消滅は、地球レベルの気候バランスと北極圏生態系の崩壊を引き起こしかねません。すでに北極圏のシベリアやアラスカでは、永久凍土の溶解などの異常事態が起きています。北極海航路の開設と運行など、もっての他の話(了)。

2002年9月20日

2003年9月20日

2004年9月20日

2005年9月20日

2006年9月20日

2007年9月20日

2008年9月20日

2009年9月20日

2010年9月20日

2011年9月20日

2012年9月20日

2013年9月20日

2014年9月20日

2015年9月20日

2016年9月20日

2017年9月20日

2018年9月20日

2019年9月20日

※ アメリカ海洋大気庁、米国立大気研究センターなどより

 

以下は参考記事 2016年9月13日公開記事

第4回「環境保全」を口実にした情報の真偽 北極海航路が温暖化防止に?

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