今回から数回に分けて、全国スーパーマーケット環境調査2023の結果について報告します。
1.スーパー調査結果の報告の前に
全国スーパー調査2023の背景については、本サイトの前話で報告していますので、そちらをご覧いください。
https://horitakahiro.sakura.ne.jp/2023/12/30/_1/
調査票については、調査参加団体向けに作成した動画「全国スーパーマーケット環境調査2023 調査票の説明」がありますので、そちらをご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=_wxxWPdVaHQ
2.ざっと、調査結果の概要
今回から数回に分けて、調査の結果について報告していきます。まず、ざっと今回の調査でわかったことの概要を紹介します(店頭から順に並べています)。
・ペットボトルの有償回収が、回収実施店の4分の1程度で行われていた。
・10種の青果物それぞれのはだか売り率を明らかにした。
・青果物売り場のはだか売り率として、棚面積比20.1%, 商品点数比17.0%という数値を得た。
・青果物売り場のはだか売り率に東高西低の傾向が見られた。
・レジ袋については全国一斉有料化の実施前後、削減が進んだが、サッカー台のプラ袋等、他の使い捨てプラ削減の取組は弱い。
3.店頭のペットボトル回収箱の設置と有償回収
調査は店頭から順に行いました。調査順に報告しますと、店頭の資源回収箱の設置では、調査した全137店の73%にあたる99店が「ペットボトル回収箱を設置」していました。発泡トレイ120店、牛乳パック119店に次いで多い報告でした(図1)。注目したのは、ペットボトル回収箱設置店のうち4分の1程度の店で有償回収(空き容器を回収機に投入した人に、何らかのメリットが付与される)が行われていたことです。
2022年秋、京都市内で行ったスーパー調査では、有償回収の有無は調査項目にあげていませんでしたが、有償回収の実施は、調査店全体(62店)の1割程度だったと思います。京都が少ないのか、1年の間に広まったのかわかりませんが、コンビニ大手も有償回収店を増やしています。このことは、空きペットボトルの回収を、今後も行政が(税金を使って)続けていくべきか考える材料になると思います。
図1 資源回収箱の設置状況(クリックすると拡大します。以下同じ)
4.青果物売り場のはだか売り 10種の野菜・果物のはだか売り率
次は、今回の調査で力を入れた「青果物売り場のはだか売り」の状況について報告します。
調査では、詳細版10種、通常版7種の野菜・果物*1のはだか売り(無包装販売)について、売り場の商品棚に占める面積比(図2)と、売場の商品に占める点数比(図3)を調べました。
図2 青果物ごとのはだか売り率(商品棚面積比)
図3 青果物ごとのはだか売り率(商品点数比)
プラチック包装の多さは、多くの人が感じてらっしゃると思いますが、野菜・果物の品種ごとに具体的な数字で示すとどのように感じられるでしょうか。中には意外なほど低い数値もあると思います。
漠然と「野菜・果物のプラ包装が多い(はだか売りが少ない)」と言うだけでなく、具体的に「何が、どのように」という実態を調べると、「この野菜(果物)なら、もう少しプラ包装を減らすことができるんじゃないの!」と考えることができます。
決して「プラ包装をなくせ」という主張ではありません。将来的に今のプラスチックに替わる代替素材に転換するにしても、「今の使用量のまま」ではなく、「まず減らせるものは減らしてから」でないと、代替素材の量の確保やコスト増など、新たな問題がいくつも生まれてくることでしょう。もちろん「減らす」ためには、事業者の努力だけでなく、「買う側(消費者)」の理解と買い物行動への反映が絶対に必要です。
5.どのように「はだか売り率」を算出したか
図4と図5で、どのように「はだか売り率」を算出したか説明します。商品点数比は、調査対象の野菜・果物ごとに、銘柄や産地、袋の入数などの違いから、店頭の商品点数を数え、うち、はだか売り(無包装販売)商品点数がいくつか、調査参加者に数えてもらいました。その全データを集め、野菜・果物ごとの全はだか売り商品点数を、プラ包装を含めた店頭の商品点数で割って算出しました。
棚面積比は、調査対象の野菜・果物ごとに、はだか売りの商品が、店舗の棚面積のうち、どれだけを占めているか、図4と図5の左上に示した5段階のいずれか、調査参加者(必ず複数)に判断してもらい、調査票に記入してもらいました。
その結果を集計し、まず、各面積区分の報告件数の割合を求め(図5の(A))、その割合に、「なし」はゼロポイント、「1%〜30%未満」は中間値の15ポイント、同じように「30%〜60%未満」は45ポイントと各区分の中間値の数値(B)を掛け合わせ、それで得た数値(C)を足して算出しました。
そのようにして得た数値が、棚面積比20.1%と、商品点数比17.0%です。
図4 はだか売り調査全集計
図5 はだか売り率の算出方法
6.はだか売りの東高西低(プラ包装の西高東低)が見えた
全国平均は前項のように算出しましたが、地方別に見るとどうでしょうか。例えば関東と関西で、スーパー店頭のプラ包装に差があるでしょうか。今回は限られた店舗数での調査でしたが、はっきりと地域差が出ました。図6をご覧ください。この図では、右上ほどはだか売りの割合が高く、左下ほどプラ包装の割合が多いことを示しています。東日本は青字、西日本は赤字で記しました(ちょうど関ヶ原のあたりで分けました)。今回の調査では、「はだか売りの東高西低(プラ包装の西高東低)」という傾向が見えました。
図6 地方別に見たはだか売り率比較
ごみ処分場が枯渇している市町村では、行政発の地域住民向けの環境情報も熱を帯びたものになり、それが地域住民の環境意識や事業者の対応に影響しているかもしれません*2。また行政による(ペットボトル以外の)プラごみ分別回収が実施されているかどうかも、地域住民の環境意識に影響していることも考えられます。ただ、今回の調査だけで結論づけることはできません。もし別の調査で、そのような「因果関係」がわかれば、店頭のプラスチック削減を後押しする手立ても見えてくるでしょう。
7.スーパーチェーンごとの差はどうか
もし仮に、どのスーパーマーケットチェーン(以下、チェーン)も同じように青果物をプラ包装しているのなら、「どこも同じだから、これ以上減らせないのでは…」と思えなくもありません。しかし実際にはチェーンによって随分と差がありました。各チェーン本社に「店舗やチェーンごとのランキングにつながることはしない」と約束していますので、チェーン名は伏せますが、本社所在地が、中部地方から東(青字)か、関西・近畿地方から西(赤字)かで分けた図7を作成しました(地方名の右のカッコ内の数字は、そのチェーンの調査店舗数。率はその平均)。
これを見てもらうと、概して東日本(青字)のチェーンの方が右上に多く、西日本のチェーン(赤字)は、グラフの右上から左下まで広く分散していることがわかります。たまたま今回対象にした店舗だけの特徴かもしれませんが、西日本のチェーンには、「二極化」が見えました*3。
今回の調査で、青果物売り場のプラ包装の割合が、チェーンによって大きな差があることがわかりました。ということは、プラ包装の少ないチェーンの取組や工夫を聞き取り、プラ包装が多いチェーンに伝えていくことができれば、チェーンを問わずプラ包装を減らす力になれるのではないかと思います。
図7 チェーン別に見たはだか売り率の東西比較
今回の報告は以上です。次回は、青果物売場でのはだか売り以外の調査結果を報告します(報告2に続く)。
*1 詳細版は、だいこん、にんじん、じゃがいも、トマト、たまねぎ、きゅうり、なす、キャベツ、ほうれん草、バナナの10種を対象にした。通常版は、なす、ほうれん草、バナナを除く7種を対象にしました。
*2 例えば名古屋市は、廃棄物最終処分場の枯渇が深刻化し、1999年には市から「ごみ非常事態宣言」が発せられました。藤前干潟の埋立計画などもあり、市民の関心が高まり、ごみ分別の細分化など市民生活に直結する施策が実施されました。今回の中部東海地域の調査店18店のうち5店が名古屋市内店舗でしたが、この5店の平均は棚面積比21.7%、商品点数比23.7%で、中部東海地域の平均値の棚面積比18.9%、商品点数比22.7%や、全国平均の棚面積比20.1%、商品点数比17.0%を上回っていました。
*3 ほぼすべての野菜・果物をプラ包装している「高級系スーパー」だけでなく、西日本には、はだか売り率が全国平均より低い生協も複数ありました。