全国スーパーマーケット環境調査の報告3

1. 調査結果のお知らせ、前回のおさらい

今回の報告3は、前回に続き、調査結果をお知らせします(文中、プラスチックをプラと略しています)。

前回は、青果物売り場のはだか売り率など、以下の調査結果をお知らせしました。
・青果物売り場のはだか売り率(プラ包装されていない無包装販売の野菜・果物の比率)
・調査対象にした10種の野菜・果物それぞれのはだか売り率
・青果物売り場のはだか売り率に、東日本と西日本で差が見えたこと(はだか売りの東高西低)
店頭資源回収箱の設置状況と、ペットボトル回収のポイント還元実施店の率

2. 青果物売り場の調査結果つづき

・青果物売り場のバラ・はだか売り商品を入れるプラ袋
今回は、青果物売り場の調査結果の続きから報告します。
調査実施の前に、調査参加予定団体から「せっかく、はだか売りをしていても、そのすぐ横にプラ袋が置いてあり、それが使い放題なら意味ないじゃないか」という意見をもらっていました。できればそのようなプラ袋を使わずに済む「買い方」を消費者も工夫してほしいところですが、調査では「必要量利用の呼びかけ掲示の有無」を調べました。

青果物売り場に、バラ・はだか売り野菜・果物を入れるプラ袋の設置は調査店(137店)中122店でした。うち「必要量利用の呼びかけ掲示あり」の報告はゼロでした(図1の上)。

・特別な野菜・果物のコーナーのプラ包装
スーパーマーケットの中には、有機・減農薬栽培や地場産野菜、産直野菜などの「特別な野菜・果物のコーナー」を設けている店があります。このようなコーナーの青果物のプラ包装の程度について調べました。
このコーナーの調査では、前回報告した一般的な青果物売り場より簡単な調べ方をしました(図1の下)。結果、「特別な野菜・果物のコーナーあり」は84店で、うち71店(84.5%)で「ほとんどプラ包装」との報告がありました。

図1 青果物売り場のプラ包装(前回報告以外)
・・・クリックすると拡大します。以下同じ。

3. 精肉・鮮魚売り場 ノートレイでの売り方

精肉・鮮魚売り場では、ほとんどの商品が発泡トレイに乗せ、ラップをかけて販売されています。それ以外の売り方を調べました。この項目は、取組内容の選択肢を設けず自由記述にしたため、取組内容の集計はしていません。

精肉の場合、「ノートレイの売り方あり」のほとんどは鶏肉のパック包装でした。ただ、店頭にノートレイであることの環境効果を掲示している店はわずかでした。

鮮魚の場合、魚一本物や切り身のバラ売りの報告がほとんどでした。トングで取った後、プラ袋を用いますが、この売り場での調査は発泡トレイを使わない売り方に注目しました。

図2 精肉・鮮魚売り場 ノートレイでの売り方

4. はかり売り、リターナブルびんビールの扱い

・はかり売りの取組
はかり売りは、「必要量買える」ことに注目し調査項目に入れました。結果「はかり売りあり」の報告は5店のみで、内訳は洗剤1、コーヒー豆3、シリアル・ドライフルーツ1でした(図3の上)。洗剤の場合、購入したボトルをリユースすることで、プラボトルごみの削減につながります。
環境効果だけでなく、買い物のエンターテイメント性を高める効果のあるはかり売りですが、これまで、はかり売りの導入後、数年で撤退する店をいくつも見てきました。なかなか定着しないはかり売りですが、消費者の理解を得るにはスーパー側の努力だけでなく、市民団体からの啓発活動も必要だと思います。

リターナブル容器入り飲料
繰り返し使うリターナブル容器入り飲料は、びんビールの扱いのみを調べました。詳細版調査の対象113店のうち68店(60.2%)で「扱いあり」でした(図3の下)。
ほとんどの店がサービスカウンター等で空きびんの回収を行っていますが、売り場に「びんビールの回収にご協力ください」の掲示があったとの報告は1店のみでした。

図3 はかり売りの取組、リターナブルびんビールの扱い

5. サッカー台のプラ袋

レジで精算を済ませた後、購入した商品を自身の袋に詰める台をサッカー台と呼びます。ほとんどの店のサッカー台にロール状のプラ袋が設置されています。水気を含む商品などを入れるための袋ですが、必要量以上に取る人も見かけます。レジ袋の有料化が全国で実施された後、目立つようになった気がします。ロール状プラ袋の設置店は137店中129店でしたが、うち「必要量の利用呼びかけの掲示」があったのは7店のみでした(図4)。

ロール状プラ袋がない店は、2つに大別されます。サッカー台そのものがなく、レジ係の横にもう1人の店員さんがいて購入商品をお客さんの買い物袋に入れていく店と、サッカー台はあってもロール状プラ袋はなく、水気のある商品を入れる袋などの「持参」をお客さんに求める店です。前者の場合、店員さんがお客さんの購入商品のほとんどをプラ袋に包んでから買い物袋に入れていました。チェーンによって方針や取組に大きな違いがあることがわかりました。

図4 サッカー台のロール状プラ袋の適量消費の呼びかけ

6. 省エネ、再エネ導入の取組

・店内の省エネの取組
店内の省エネの取組として、次の2項目を調べました(この項目は詳細版のみに設定)。1つは、扉付きの冷蔵ショーケース(リーチインショーケース)の設置についてで、対象113店中3店のみ(1チェーン)でした(図5の上)。

ショーケースの入れ替えは多くの費用が必要ですので、より取り組みやすい対策として、冷蔵ショーケースへの透明なミニカーテンの設置についても調べました。この取組を実施していたのは、113店中8店(3チェーン)でした(図5の下)。

以上の2項目は、お客さんにもわかりやすい取組として調査項目に設定しましたが、全国的に見ても稀有な取組であることがわかりました。

図5 店内の省エネの取組

・再生可能エネルギー利用の案内
再生可能エネルギーについては、発電機の設置や電力購入の案内掲示について調べました(図6)。結果は太陽光発電機や風力発電機を設置している旨の掲示は5店、再生可能エネルギーの使用(購入含む)の掲示は2店のみでした。

この項目では、実際に設置または導入されていても、お客さんの目につくところに案内掲示がなければ、「なし」として報告してもらいました。

図6 再生可能エネルギー導入の案内掲示

7. 今回の報告まとめと次回の予告

・レジ袋削減で「終わった」わけではないのに…
1990年代から各地で「買い物袋持参運動」が盛んに取り組まれ、2020年7月にはレジ袋全国一斉有料化が実現しました。ただ、レジ袋有料化の実現以降、スーパーマーケットから出るプラごみ削減を後押しする市民・消費者の活動はおとなしくなってしまいました。
でも実際には、前回報告した青果物売り場のプラ包装や、今回報告したバラ・はだか売り青果物を入れるプラ袋サッカー台のプラ袋など、まだまだ多くの使い捨て(ワンウェイ)プラ包装が使われています。ただし、その使用実態や削減の取組の有無など、これまで明らかになっていませんでした。今回の調査は、百数十店を対象とした限られた調査ですので「断定」はできませんが、スーパーマーケット店頭プラ包装の「傾向」は見えたのではないかと思います。

・地域の市民・消費者活動のヒントになるかも
持続可能な社会づくりや脱炭素など社会課題が大きくなるほど、地域で活動実践している市民・消費者の役割が見えにくくなります。ただ、大きな目標実現のためには、環境問題に関心の薄い人たちや環境教育を受ける機会がなかった人たちにも環境情報を届ける必要があります。スーパーマーケットには環境問題への関心の強弱に関係なく多くの人が訪れます。まさに環境情報を届ける場として期待できるのではないかと思います。
今回の調査結果から、地域の市民・消費者団体と流通事業者、行政が協力して取り組める課題のタネがいくつも見えてきたと思います。次回の報告では、「この調査結果から、このような取組ができるのではないでしょうか」といった提案を、いくつかさせてもらおうと思います(以上)。

全国スーパーマーケット環境調査 報告2
調査結果、店頭の資源回収、青果物売り場のはだか売り率(全国平均や東西格差)など。

全国スーパーマーケット環境調査 報告1
調査の背景、目的、実施概要、手順など。

 

 

 

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