全国スーパーマーケット環境調査 報告4

1. 前回のおさらいと、今回の内容

2023年10月から11月にかけて実施した、全国スーパーマーケット環境調査の報告の続きです。

まず、おさらいです。報告1で調査の背景や目的、実施内容について紹介しました。報告2と前回の報告3で調査結果を報告しました。今回の「4」では、調査結果をもとに、「こんな地域活動ができるのでは」という提案をいたします(文中プラスチックをプラと略しています)。

提案の前に、前回と前々回に報告したおもな調査結果を列挙します。
・ペットボトルの店頭資源回収実施店で、有償回収が4分の1
・10種の青果物それぞれのはだか売り率を明らかにした。
・青果物売り場のはだか売り率として、約20%という数値を得た。
・青果物売り場のはだか売り率に「東高西低」の傾向が見られた。
・有機栽培や地場産野菜などの特別コーナーの青果物はほとんどがプラ包装。
・サッカー台のプラ袋などへの「必要量利用の呼びかけ掲示」はごくわずか。

2.地域に、ペットボトル有償回収店はどれだけあるだろう

空きペットボトル回収を実施しているスーパーマーケットのうち、ポイント付与などの有償回収をしている店舗がほぼ4分の1あるとの調査結果が出ました(図1)。大手コンビニエンスストアチェーンでも有償回収する店舗が増えています。

であれば、今後も市町村が地域住民から空きペットボトルを回収する必要があるのか、考え直してもよいのではないでしょうか。市町村回収でもリサイクル業者への有償引き渡しが広まっていますが、回収車を地域の隅々まで走らせて集め、ごみを取り除くなど、リサイクル業者に引き渡す前に多くの労力をかけています。そのため、多くの市町村は売却益以上の費用をペットボトルリサイクルにかけています。空きペットボトルは買った店に返すことを促し市町村の負担を少なくし、その分、市町村は、福祉や教育、子育て支援、防災対策など、住民要求の高い事業に専念してもらうなど、今回の調査結果は。将来のまちづくりを考える材料になると思います。

地域で活動している市民団体は、スーパーマーケットに限らず、自分たちの住む地域で、どれだけの店がペットボトルの有償回収を実施しているか、実態調査を実施してはどうでしょうか。調査データから地域の行政や事業者と話し合う材料が得られると思います。

図1 ペットボトル有償回収が増えるなら
(クリックすると拡大します。以下同じ)

3. どの野菜・果物ならプラ包装を減らせるか

今回の全国スーパーマーケット環境調査で、10種の青果物のはだか売り率を明らかにしました(図2)。全体的な傾向として、プラ包装が多くなりましたが、はだか売り率の高さは野菜・果物によって大きく異なります。

中には意外なほどはだか売り率の低い野菜・果物のあると思います。「どの野菜・果物なら、プラ包装を減らしても大丈夫か」、市民団体も地域住民と一緒に考えましょう。たとえば、カットしていないダイコンやキャベツまでプラ袋に包む必要があるか、ほうれん草など結束バンドだけでよいのでは、バナナは直接皮にラベルを貼ればよいのでは…、いろんなことが考えられます。店舗側にも事情があると思います。具体的な提案をすることで、店舗側の事情もわかると思います。
また、土物野菜を入れる袋の持参など、買う側にも工夫が必要な場合もあります。地域住民へのアンケートや地元のスーパーマーケットへの聞き取りなどで、様々な意見やアイデアを募ることができるでしょう。

図2 どの野菜・果物ならプラ包装減らせる?

4. あなたの地域のお店の青果物のはだか売り率は?

今回の全国スーパーマーケット環境調査は、調査店数も対象とした青果物も限られますが、130店以上の調査で「はだか売り率約20%」というデータを得ました(図3)。「報告1」でこの調査の背景情報として紹介した「フランスのはだか売り率が60%以上」と比べるとずいぶんと低く感じますが、生活実感として「ほぼこんなものだろう」という感じを受けた人も多いのではないでしょうか。

ただ、ざっくりと地域別に見ると、西日本でプラ包装が多く、東日本ではだか売り率が高いという傾向が見えました(図4)。また同じ地域でもチェーンによってずいぶんとはだか売り率に開きがあることもわかりました。
皆さんの地域のスーパーマーケットなどの流通事業者の店舗では、青果物に限らずプラ包装の実態はどうでしょうか。またチェーンによってもどう違うか、仲間を募って自分たちで調べてみてはどうでしょうか。もちろん単独で取り組むのはたいへんです。地域活動の実践団体で、関心を持たれたらタイトル画面の連絡先にお問合せください。

図3 はだか売り率の調査結果から

図4 はだか売りの東高西低はなぜ?

5. せめて、こんな掲示があってもよいのでは…

ほとんどのスーパーマーケットのサッカー台(お客さんが商品精算後に自身の買い物袋に商品を入れる作業台)に、ロール状のプラ袋が設置されています。前回報告したように「必要量だけお取りください」といった呼びかけ掲示がある店がごくわずかしかなかったことを報告しました。何に使うのか、やたらたくさん袋を取っていくお客さんもいます。ですが、ごく一部の人ですし、多くのお客さんはこういった掲示を理解してくれると思います(調査実施時2ヶ月後、掲示を付けてくれるようになった店がありました)。

同じように、青果物売り場のバラ・はだか売り商品を入れるプラ袋についても、必要量利用の呼びかけ掲示を調べました。ですが、どこのスーパーマーケットにもありませんでした。もしあれば「全国唯一の先進事例」として紹介するところでしたが、残念でした。

店舗に設置されている「お客さまの声」のような箱に意見を入れることからでも活動を始めることができます。こういった掲示はすぐに効果に結びつくものではありませんが、少しずつ「使い捨てプラスチックは、減らしていく必要があるのだ」という意識を、消費者に広めていくことにつながると思います。

図5 必要量だけお取りくださいの掲示は

6. 有機・減農薬、地場、産直野菜などのコーナーはプラ包装多し

有機・減農薬、地場、産直野菜など特別な野菜・果物のコーナーでは、生産者情報を掲載したラベルを貼付するためもあり、プラ包装が多くなっていると思います。プラ包装の多さが調査結果に浮かび上がりました。

現状、すぐに減らすことは難しいかもしれません。ですが、多くの人が意識することが技術革新を促します。逆に誰も問題意識を持たければ、いつまでも今のままです。

日本はリサイクルの普及ではがんぱってきましたが、売り場はプラ包装であふれています。海外から来た人たちから「日本で食料品の買い物をすると、プラごみがいっぱい出るので驚いた」という声を聞かれたことはないでしょうか。今の日本の売り場光景が「当たり前」と思っていると、プラスチック問題の取組で、海外から大きく遅れをとることになるかもしれません。

図6 有機・地場産野菜売り場のプラ包装

図7 めざすのは大リサイクル社会?

7. まとめ 商品の選択は未来の選択

短期間ですぐにごみになる使い捨てプラを減らそうという動きは、環境意識の高いヨーロッパを持ちますまでもなく、韓国や台湾でも熱心に取り組まれ、世界のトレンドになっています。ただプラスチックはとても便利なもので、削減の推進には、市民・消費者の理解が絶対に必要です。その点、食品や日用品を売っている店舗には、環境意識の高い低いに関係なく、誰もが訪れます。店舗での買い物を通じて、知らず知らずのうちに環境情報が目に入り、少しずつ環境意識の向上につながればよいのではないでしょうか。

そのためには、まず先に気づいて動く人たちが必要です。はじめは当然少数です。つまりアーリー・マイノリティと呼ばれる人たちです。2024年秋のスーパーマーケット環境調査のような活動を通じて、世の中を変えていくアーリー・マイノリティが増えることを期待しています(了)

図8 元栓を締めた方が早道じゃないか

図9 買い物とは未来を選ぶ投票

 

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