第18話 宅配業界の苦境から考える消費者ニーズと需要創造、環境教育の役割

当日配送って当り前?

最近、宅配業者が過重労働や人手不足で悲鳴をあげていることが話題になりました。全国のほとんどの地域に「翌日配送」されることでも「便利になった」と思っていたら、ネット通販では「当日配送」が当り前になりつつあります。当初は「そこまでしなくていいのに!」と思った人も多かったと思います。しかし、徐々に利用者が増え、そのようなサービスを提供する通販業者が増えてくると、「注文した日に配達して当り前」と考える消費者も多くなります。やがて、通販業者に限らず多くの企業から「当日配送は消費者ニーズだからやめることができない」という声がでてきます。

消費者ニーズって都合のよい言葉!

この「消費者ニーズ」という言葉は、様々な場面で登場します。「コンビニの終日営業の増加」「レジ袋やペットボトルなど容器包装の増加」「真冬に夏野菜が売られるようになったこと」などなど、あげだしたらキリがありません。もちろんそれぞれ事情が違い一律に考えることはできませんが、上記の「当日配送」に限って、果たしてそれが消費者側の要請によって生まれたものか考えてみましょう。

ネット記事ですが、当日配送が消費者ニーズによって生まれたものか否か考える題材に出会いました。「ヤマトを苦しめる“当日配送”にアマゾンがこだわる「本当の理由」」(週プレNEWS 2017年4月17日)

当日配送は消費者ニーズで生まれたのではない!

リンク先記事には、およそ下記のようなことが記されています。

  • 当日配送について、もともと消費者の関心や要望は高くなかった。(「配送サービスで顧客が大切だと思っている項目」としてあげた消費者は4.4%・複数回答)
  • 一方、商品の供給側(この場合アマゾン)には大きなメリット(商品回転率の向上、在庫の減少、返品率の低下)がある。
  • そのため、顧客が当日配送を選択するよう誘導してきた。(ここまで記事より)
    つまり、当日配送は消費者が求めたものでなく、企業側(この場合アマゾン)のニーズによって生まれ広まったと、この記事は伝えています。

便利さの裏で…

「当日配送」が広まったことで起きていることは、配送現場のドライバーへの過剰な負担です。朝から1日配送作業をし、6時頃配送センターに戻ってくると、そこにネット通販の当日配送の荷物が大量に届いている…。もともと時間指定配達や不在による再配達などで、配送作業が夜間に及ぶことが常態化していますが、夜間専用ドライバーがいるわけではありません。ネット通販の当日配送分の荷物を届け、9時頃配送作業から戻り、その後も事務作業がある…。

長時間労働が常態化し、業務保証されないサービス残業が拡大していた実態は、「残業代4万7千人に未払い ヤマト、2年分190億円」(東京新聞WEB記事2017年4月18日配信)など、マスコミ記事で大きく取り上げられました。

ヤマトホールディングスの場合、該当する従業員に過去2年間の未払い賃金計190億円を一時金として支払うと発表しましたが、中小の運送業者ではこうはいかないでしょう。

他人事とは言っていられない

我々一般消費者への影響はどうでしょう。「私たちはサービスを受ける側。便利であれば便利なほど良い。当然安ければ安いほどよい。」と思っている人も多いと思います。しかしいつまでも「サービスを受けるだけの側」で居られるでしょうか。宅配業者に限らず、社会全体が長時間労働化しています。新たなサービスが生まれても注目されるのは束の間。すぐに他社がより密度の高いサービスを提供し始め、際限なくチキンレースが繰り広げられます。

今自分が就いている仕事には関係なくても、何かのことで転職が必要になった時、また自身ではなくても、何年も後、自分の家族や子・孫などが職を求めた時、厳しい条件の仕事しかないということになりかねません。

需要創造とのつきあい

当日配送に話を戻すと、先に紹介した記事では「消費者ニーズ」ではなく、商品の供給側の要請によって当日配送が生まれ広まったことが記されていました。新たな需要として創り出されたもの、つまり「需要創造の産物」だといえるでしょう。

企業は当然のこととして、新たな需要を掘り起こし利益を増やそうとします。そのことは悪いことではありません。消費者にも便利さや豊かさをもたらすこともあります。しかし得たものの代わりに何か失われるものはないか、どのようなことが起きているか、「誰かに過剰な負担がかかっていないだろうか」と考える感性も必要です。

環境教育とのつながり

このブログの全体テーマである「環境教育」とのつながりを述べるならば、商品やサービスの選択において、表面上の「便利さ」だけでなく、将来を見据えた影響まで思いを巡らし選択できる力を育むことも環境教育の大切な役割だと思います。需要創造の働きかけに対して常に反応するのではなく、自分の暮らしに必要なものは何か、どこまで求め、どこで満足を得るのか自身の指針を持つことは、生きていくうえでとても大切なことです。古風な言い方をすると、「足るを知る」ことを、環境教育の大切な役割の1つとしてあげたいと思います。(了)

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