京都でスーパーマーケット環境調査を実施2(野菜のプラ包装報告・前編)

日本のスーパーの青果売場の包装状況は?

前回の「準備編」に続き、京都市ごみ減量推進会議(ごみ減)が2022年11月に、京都市内のスーパーマーケット62店で実施した「お店のプラスチック調査」を取り上げます。「お店のプラスチック調査」では、店頭の資源回収ボックスからサッカー台(購入後の商品を詰める台)のロール状ポリ袋まで各売場で調べました。今回は青果物(野菜・果物)のはだか売り(無包装販売)の状況について調査結果を報告します。次回はスーパーチェーンによる違いについて取り上げ、以降、他の売場を含めたプラスチックを減らす取組、省エネ事例などを報告していきます。

調査内容と調査の進め方

青果物売場では、日常よく使い、通年入荷する10種の野菜(だいこん、にんじん、かぼちゃ、じゃがいも、トマト、たまねぎ、きゅうり、なす、ねぎ、キャベツ)を対象にプラスチック包装の状況を調べました。

調査票には、図1の「調べ方・書き方」を付けるとともに、ボランティアだけで店に行ってもらうことはせず、必ずごみ減スタッフが同行して調査を実施しました。

図1 青果物売り場のはだか売り 調べ方・書き方

青果物売り場の調査結果

調べた結果を図2の調査票に記載してもらいました。右側の商品点数の場合、各野菜が商品棚に何点あるか、商品点数を調べ(銘柄、産地、パック入数が違えば別商品としてカウント)、うち、カット商品(だいこんやかぼちゅ、キャベツなど)は何点で、はだか売り商品が何点あるかなど、調査員にカウントし。数字を記載してもらいました。
左側の「面積比調査」は、たとえば、だいこんの商品棚のうち、無包装のだいこんが棚面積のうち、図1左上の5段階のどの程度占めるか、調査員に判断してもらい、該当するところにチェック(✔︎)を入れてもらいました。大きな店では、売場の数ヵ所に、だいこんやじゃがいもなどが分散して置かれている場合があり、そのことも考慮したうえで、何%か判断してもらいました。個人によって判断が異なる場合がありますので、できるだけ調査は複数人で行い、参加調査員の合意で割合を判断してもらいました。

図2 青果物売り場の調査票

野菜のプラ包装調査の結果

 62店舗の青果物売場を調べた結果は、図3の通りです。

図3 青果物売り場の調査結果(野菜ごとのまとめ)

商品点数で見た場合、8割以上がプラ包装

図3に示すとおり、62店舗の店頭にあった2,342点の青果物のうち、はだか売りの野菜は413点で、割合にして17.6%だったことがわかりました。「包装あり」のほとんどがプラスチック包装ですので、8割以上の野菜がプラスチック包装されて売られていたことになります。

各野菜の商品点数に占めるはだか売りの割合をグラフ化したのが下の図4です。

図4 野菜ごとのはだか売りの比率(商品点数での調査)

売場の棚面積では、7割以上(4分の3)がプラ包装

下の図5の上部は、図3の「売り場面積」の結果を抜き出したものです。「件数の割合(A)」と下段青枠の「各面積の中間値(B)」を掛け合わせ(A×B)、それらを足して、はだか売り野菜が占める面積割合を求めました。

調査結果から、はだか売り野菜が商品棚に占める割合を25.7%と試算しました。
同じ試算方法で、野菜ごとに、はだか売り面積比を出した結果を、図5に示します。

図5 野菜ごとのはだか売りの比率(棚面積での調査)

全体的に、商品点数より面積比の方が、はだか売り率が高くなっています。だいこんやキャベツなど、カット販売される商品の多くがプラ包装され、フルサイズで販売される野菜にはだか売りが多いことなどが、棚に占める面積に反映したと思われます。ただし、フルサイズのだいこん、キャベツでもプラスチック製フィルムや袋で包んでいる店も複数ありました。

青果物の包装に用いられる素材はほとんどがプラスチックですので、今回の調査で、商品点数で8割以上棚面積の4分の3程度をプラスチック包装された青果物が占めていることがわかりました。

プラ包装4割以下で問題視する国、8割でも問題視しない国

 3話前の本ブログ(使い捨てプラスチックの削減、世界はずっと先に!)で、2022年1月からフランスで、おもな野菜・果物31種について、「小売店での1.5キログラム未満の未加工の野菜・果物のプラスチック包装」を禁じたことを伝えました。施行に際して、フランス・エネルギー移行省から、「現在フランスでは37%の野菜・果物が包装して販売されていると推測される。今回の処置で毎年10億個以上のプラスチック包装が削減できる」とのコメントが出されたこともお伝えしました。

図6 青果物売り場のプラ包装 フランスと日本の比較

 37%のプラ包装を問題視して、その削減に向けて対処しようとしている国がある一方、7割〜8割の野菜がプラ包装されていて、誰も問題視しない国もあります。どちらの国も、気候変動防止の国際的な約束(議定書)を採択した会議の議長国です。
たしかにそれぞれの国で、気候や湿度、食料自給率(産地からの距離)、消費者意識など、いずれも違うので、「フランスをお手本に」などと言うつもりは全くありません。ただ、2話前の本ブログ(カーボンニュートラルって、こういうことなんだ!)で書いたように「カーボンニュートラルは、なにか大きな政策(たとえば「水素社会の実現」など)で実現するのではなく、社会のすみずみまで目を配り、「何が持続可能か」を考え、いくつもの具体策を積み上げていくことで実現する」のだと思います。

小さなことだけど、小さなことに目が届かないのもどうか

スーパーマーケットの野菜のプラ包装なんて、私たちの暮らしの環境負荷全体から見れば、微々たるものです。ただ、次の世代が安心して暮らしていけるには、社会の仕組みの変更や技術革新が必要だとしても、それを促す力は、多くの人が現状を知ることから生まれると思います。野菜のプラ包装なんて小さなことですが、現状の把握から「次」が生まれると思います。

とはいえ、もしも全てのスーパーマーケットが同じようにプラスチック包装を使っているなら、「どこも同じだから、減らすのって難しいよね」と思う人も多いことでしょう。今回の調査で、チェーンごとに大きな差があることがわかりました。しかも同じような客層、事業規模のスーパーチェーンでもプラスチック包装に大きな差があることがわかりました。次回そのことについて報告します(ただしチェーン名は伏せます)。

以上

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