グラフ更新 その3 プラスチックくず輸出量の増加

プラスチック生産量、廃棄量、プラスチックくず輸出量

前回の「グラフ更新2023 その2 プラスチックの生産量とごみの量」で、プラスチックの生産量とごみの量のデータをグラフ化して示しました。今回は、そこに「プラスチックくず」の輸出量を重ねてみました。下の図1の青い折れ線が「プラスチックくず」の輸出量を示しています(それぞれのデータ出典は、グラフ中および文末に記載はいます1)。
プラスチックごみではなく、プラスチックくずと表現しているのは、財務省の貿易統計がそのように表現しているので、それに合わせました。

プラスチックくずの中には、工場などの生産工程で出たものも含まれています。プラスチックは多くの種類があり、複合的に利用される場合が多く、また一旦市場に出て使用済みとなった後に回収されたものは、汚れや他の素材と混ざったものも多くなります。複合材や汚れを伴うものは、リサイクル用途が限られますが、生産工程から出たロス等は、材質がはっきりしているうえ、汚れていないものもあります。こういった「素性が明らかできれいな」プラスチックくずは工業原料として先進工業国にも輸出されています。すべてがそのような「資源」であれば問題はありませんが、実際には、先進工業国から途上国への大量のプラごみ輸出が、現地の環境汚染を引き起こしているとの指摘もあります*2

ただ、貿易統計は材質ごとの分類までしか掲載されていないので、輸出される「プラスチックくず」には資源が多いか、事実上のごみが多いのか、貿易統計からはわかりません。


図1 プラスチック生産量、廃棄量、プラスチックくず輸出量

 

プラスチックごみ国内発生量とプラスチックくず輸出量

プラスチックくずの輸出量のピークは、2013年の年間168万トンでした。同じ年のプラスチック生産量やごみ量が1,000万トン前後ありましたので桁が違います。そのため、プラスチックくず輸出量の変化がわかりにくく、2軸グラフにして、プラスチックごみの増減の傾向と合わせて見ることにします(図2)。

プラスチックごみの国内発生量は、2000年に1,000万トンを超え、しばらく高止まりした後、増減はありますが、全体として減る傾向にあります。一般廃棄物(おもに家庭から排出)と産業廃棄物を色分けしましたが、特にどちらかが突出して増えているわけではなく、「どちらも増えている」といえます。ちなみにオフィスから出るプラごみも、産業廃棄物に区分されます。

プラスチックごみの国内発生量を示すグラフ(縦棒グラフ)に、プラスチックくずの輸出量(折れ線)を重ねました(図2)。縦棒と折れ線で単位が違うので、傾向だけをみてください。1990年代の中頃からプラスチックくずの輸出が急増していることがわかります。


図2 プラスチックごみ国内発生量とプラスチックくず海外輸出量の推移

 

プラスチックくず海外輸出量をみていくと

 もう少し状況を知るために、プラスチック廃棄物をめぐる状況として、何年にどのようなことがあったか、「トピック」を書き込んでみました(図3)。容器包装リサイクル法をはじめリサイクルの制度が整い、社会に浸透するのに従い、プラスチックくずの輸出量も増えています。

 1990年代後半の日本では、国内企業に環境マネジメントシステムが普及・浸透しました。生産工程でのロス削減がより徹底されるようになりましたので、前述のような「きれいな資源」としてのプラスチックくずが輸出量を押し上げたとは考えられません。

 このように考えると、海外へのプラスチックくず輸出の増加要因は、市中回収されたプラスチックの増加と考えられます。決してリサイクルを否定しているわけではありませんが、小学校の環境学習などで「リサイクルの大切さ」や「効果」が強調される一方、このようなリサイクルをめぐる実態や毎年輸出量が増えていることなどは、環境教育の場でもほとんど話題になりませんでした。

 

輸出されていたのは「資源」だけではなかった

環境活動実践者にも「海外であれ、どこであれ、リサイクルされているのだからいいんじゃないの?」という人がいました。そういった考えは実態を反映したものでしょうか。2017年7月、プラスチックくずの最大の輸出先だった中国政府が「外国ごみの輸入禁止」措置の発表して以降*3、輸入国側でも、外国から大量に持ち込まれる「資源と称したごみ」の扱いに苦慮していた実態が明らかになりました*4

 中国の輸入禁止以降、日本から外国に輸出される「プラスチックくず」は大きく減り、2022年には60万トンを割り、ピークだった2013年の3分の1にまで減りました。次回は、近年の日本からのプラスチックくず輸出先主要国を報告します。

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*1 図1のデータの出典

生産量の出典:日本プラスチック工業連盟
“直接の引用資料は、塩ビ工業・環境協会 プラスチックの種類別生産量 プラスチック生産量の生産推移より
https://www.vec.gr.jp/statistics/statistics_4.html2023.4.11確認

廃プラ排出量の出典:2018 プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況 一般社団法人 プラスチック循環利用協会ょり

プラスチックくず輸出量の出典:財務省貿易統計 全国分品別国別表(9桁の統計品目番号のうち、3915で始まる品目を抽出)輸出から 各年のデータは暦年 https://www.customs.go.jp/toukei/info/tsdl.htm 2023.5.4確認

*2 プラごみ輸出の問題を指摘する記事の例

先進諸国のごみの受け入れを拒否する東南アジア、ニューズウィーク、2019年11月28日配信記事 https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/11/post-13501.php など。

*3 2017年7月の中国国務院による「海外ごみの輸入禁止と固形廃棄物輸入管理制度改革」の関連ニュース

資源ごみの輸入禁止へ、環境への悪影響を配慮(中国)、JETROビジネス短信、2017年9月15日配信
https://www.jetro.go.jp/biznews/2017/09/847f1987f55e4fab.html など。

*4 上記措置による日本国内への影響報告など

中国における外国ごみの輸入禁止と固形廃棄物輸入管理制度改革に関するレポート、JETRO、2019年4月
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/0a81da1f65d47788/20190001.pdf

中国「外国ゴミ輸入禁止」の波紋、日経ビジネス、2018年2月2日配信
https://business.nikkei.com/atcl/opinion/15/101059/013100136/ など

記載のURLは、すべて2023年5月21日確認

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