緑茶といえば、ペットボトルばかりに

緑茶茶葉(荒茶)の生産が前年比15%減

緑茶(茶葉)と緑茶飲料(液体で売られている緑茶)の生産の増減をあらわしたグラフを、2020年度データに更新しました。
オレンジの線は茶葉(荒茶)の生産量をあらわしています。茶葉の量には、輸入分はプラスし、輸出分は差し引いています。緑の線は清涼飲料としてのペットボトル緑茶の生産量をあらわしています。両者は単位が違うので「参考」として見てください。
2020年度はコロナ禍の特別な年でした。巣ごもりや在宅勤務などで、自宅で茶を淹れる人が増え、逆に街頭の自販機で飲料を購入する人が減ったものと思っていました。ところがグラフを見てもらうと、緑茶飲料は売れているのに(前年比ほぼ横ばい)、茶葉(荒茶)の生産が激減していることがわかります。緑茶飲料の約97%がペットボトルで販売されていて、緑茶飲料=ペットボトル緑茶といえます。
それにしても、茶葉生産量の落ち込みは大きく、前年比15%減でした。

ペットボトル緑茶が売れれば、茶農家の収入増につながるの

このグラフを見て、「ペットボトル緑茶が売れないと、茶農家さんは困る」と思う人もあることでしょう。なので「ペットボトル緑茶の利用を控えようなどと言わない方が茶農家さんのためだ」という人もいると思います。
ただ、ペットボトル用の茶葉には、3番茶や4番茶が多く使われていると聞きます。茶農家さんの中には「もともと買い手のないものを買ってもらえるのはありがたい」とおっしゃる方もあります。一見、ごみ減量のうえ、茶農家さんの収入増にもつながるように思えます。

丹生込めた茶が売れなくなっている

ただ、いつまでも「ペットボトル用に茶葉を買ってもらってありがたい」とは言えない状況になっています。グラフが示しているのは、ペットボトル緑茶ばかりが売れて、茶農家さんが丹生込めて作った茶葉が売りにくくなっている状況ではないでしょうか。2010年頃から緑茶飲料(ほとんどペットボトル入り)と茶葉生産量の線が上下にはっきりと分かれていることがわかります。ペットボトル緑茶しか売れない状況になればなるほど、この差は加速していくと思います。

茶は日本の文化の基層

茶は京都や静岡、鹿児島などの地域経済を支えてきただけでなく、日本の文化の基層をなしてきました。また、茶葉から淹れた茶が、一煎目、二煎目、三煎目と味が変化することなど、ペットボトル緑茶では再現できない奥深さがあります。「ごみ問題、環境問題を考えて、ペットボトルを減らそう」ではなく、より上質な暮らしは何かといった視点からも、「お茶を淹れること」の価値を見直してもいいのではないかと思います。


ハイムーン氏画「お茶の時間」