京都でスーパーの青果物の包装を調べてみた(簡易調査)

フランスでは63%の青果物は無包装

 本ブログの前回前々回の2回、フランスの環境法を紹介しました。
特に前々回は、フランスが「循環経済法」で、日常生活に関わるかなり細かな商行為まで規定していることを紹介しました。その1つとして「小売店での1.5kg未満の未加工の野菜・果物のプラスチック包装の禁止(第77条)」があり、2022年1月から施行されたことを紹介しました。
この規定の施行に先立ち、フランスのエネルギー移行省から「現在のフランスでは、37%の野菜・果物が包装付きで販売されていると推計しており、今回の措置により毎年10億個以上のプラスチック包装が削減できる。」という談話が発表されました
「包装付きが37%」ということは、逆に考えると「63%は無包装販売(はだか売り)なの?」と思いました。この状況を模式的に示したのが図1です。


図1 フランスの青果の包装(模式図)

日本のスーパーの店頭を調べてみた

 では日本ではどうなのか、身近なスーパーの店頭を調べてみました。
期間は2022年6月から7月。対象は京都市内のスーパーマーケットで、青果物のみ。だいこん、にんじん、かぼちゃ、じゃがいも、たまねぎ、なす、ねぎの8種について、青果売り場で無包装(はだか売り)商品の売り場面積比商品点数調べました。
京都市内には260店以上のスーパーマーケットがありますが、その一部の34店で調べました。今回は簡易な調査のため、店舗にアポイントを取ったのは1店のみです。ほとんどの店でアポイントを取らずに調べましたので、店名は伏せます。
34店全てで、はだか売りの売り場面積比を調べ、28店で商品点数を調べました。

今回の「簡易調査」の調べ方


図2 簡易調査票(クリックすると拡大します。以下同じ)


図3 調べ方の例

 図2は、今回の簡易調査で用いた調査票です。
図3は、売り場での調べ方の例です。この写真では、じゃがいもが5点(品種)売られてい.るのがおわかりいただけると思います。うち①がはだか売りです。売り場の表面積のうち、はだか売り商品の棚が占める割合を測る際は、⑤のようにすでにほとんど空になっている棚も含めて測りました。この場合、はだか売りは「10%未満」と判断しました。
図4はその記入例です。


図4 記入例

ここまで包装するの?

 調べていくと、発泡トレイに乗せてラップをかけた青果物は少なくなっていることがわかりました。一方「こんなものまでプラ包装するの!」と思う例がいくつも見つかりました。その一部を掲載します(図5から図7)。


図5 一本まるごとプラ包装されただいこん


図6 ブロッコリーもまるごとプラ包装


図7 キャベツ・レタスもまるごとプラ包装

簡易調査の結果


図8 店ごとの調査結果の例

図8は、ある店の調査結果です。前々項の「今回の簡易調査の調べ方」を8種の野菜で行いました。
はだか売りの「売り場表面積比」は34店、「商品点数」は28店で調べました。調査結果を集計したのが図9です。


図9 調査結果集計

 図9を見てもらうと、「面積比」では、「はだか売り・なし〜10%未満」が7割以上を占めることがわかります。ほとんどの店で、はだか売り商品は売り場のごく一部を占めるだけでした。そのことをグラフ化したのが図10です。
商品点数で見た場合、はだか売り商品の割合は全体の17%でした(図9と図11)。これを、図1のフランスの青果の包装(模式図)と比べると、両者の違いの大きさに驚かされます(図12)。両国の気候の違いや農産物の産地との距離など条件の違いがあるため、単純比較はできませんし、今回の調査は簡易なものですので、結論づけることもできません。しかしフランスでは、37%の包装を問題視し、それすら減らそうとしていますが、日本ではこれだけ多くのプラ包装が使われているのに、問題視されていません。使い捨てプラスチック問題が大きく注目される中、また今後カーボンニュートラル社会を実現するためにも、この差の大きさから考えるものが多くあると思います。


図10


図11


図12 日仏青果包装の比較

スーパーによって取組に大きな差がある

 もう少し見ていきましょう。「商品点数」を調べた28店のうち、チェーン全体の売上が1,000億円以上の大手チェーンの店舗8店と、1,000億円未満の中堅以下のチェーンの店舗20店を分けて集計してみました(図13)。
規模の大きなチェーンの多くが、1980年代から消費者団体をはじめ多くのステークホルダーと対話し、窓口としての環境担当やC S R推進室を設けるなど、環境対策の推進に努めてきました。
1,000億円未満のチェーンもよく見ると、青果物の包装は店によってかなりの差がありました。ほぼすべての青果物をプラ包装している店がある一方、大企業の店よりも省包装に努めている店もありました。
これだけ差があるということは、熱心な取組や創意工夫を見つけて他の店に広めることができれば、地域全体のプラスチック削減を進めることができるのではないかと考えます。


図13 京都での調査データを規模別に分けてみた

11月以降「お店のプラスチック調査」を行う予定

 今年(2022年)11月以降、筆者が所属する京都市ごみ減量推進会議では、京都大学と協働で、青果物だけでなく他の売り場も含めて、京都市内の100前後の店舗(スーパーマーケット)を対象に「お店のプラスチック調査」を行う予定です。これは、お店の優劣をつけるのが目的ではなく、前述のようにすぐれた取組を見つけ出し、地域に広めることを目的とします。
同時に、多くの人に調査に参加してもらい、暮らしのまわりのプラスチックの多さに気づいてもらうことも目的としています。あらためて別の機会に、調査ボランティア募集の案内をいたします。

 次回は、今回の調査で見つけた店舗のユニークな取組を紹介します。

* JETROニュース 2021年10月8日配信ニュースよりhttps://www.jetro.go.jp/biznews/2021/10/8fb8d7bbd751ffa6.html. 2022年8月21日確認

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